【7月3日 AFP】チリやアルゼンチンなど南米大陸南部の広い範囲で2日、皆既日食が観測された。昼間の明るさが数分間だけ夜の暗闇になる天文現象に大勢の人が息をのんだ。

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 世界有数の高性能天体望遠鏡があるチリでは、中部のライゲラ(La Higuera)などで大勢の人が天体ショーにくぎ付けになった。

 チリ中部のラセレナ(La Serena)付近の複数のビーチには数千人が詰め掛け、丸い月が太陽を覆い隠し、2分半以上にわたって完全に太陽の光を遮るのを見守った。

 皆既日食は太平洋上で午後1時1分(日本時間3日午前2時1分)に始まり、帯状に広がる幅150キロの暗闇が午後4時38分(日本時間3日午前5時38分)にチリの沿岸部に達した。暗闇の帯はその後アルゼンチン南東部を通って南大西洋に移動した。

 皆既日食は珍しい現象だが、今回の皆既日食は特に、地球上で天体の観測と研究に最も適した地域で発生したという点からもまれだと言える。

 欧州南天天文台(European Southern ObservatoryESO)が運営する南米チリのラシーヤ天文台(La Silla Observatory)の天文学者、マティアス・ジョーンズ(Matias Jones)氏は、「皆既日食のすべてを天文台の上空で観測できることはとても珍しい。前回観測できたのは1991年だった」と述べた。

 オーストラリアから訪れた観光客のベッツィー・クラーク(Betsy Clark)さんは、「世界中を見ても、ラシーヤ以上に皆既日食を観測するのに良い場所はないと思う。ここはとても乾燥していてほとんど確実に太陽が見えるから」と話した。

 クラークさん一家を含む数千人が2日、ラシーヤ天文台周辺の岩だらけの山に登り、皆既日食を楽しんだ。乾燥して空気が澄み、光害もほとんどない天体観測の絶好の場所である同地域には、推定30万人の観光客が訪れた。(c)AFP/Paulina ABRAMOVICH