【7月3日 AFP】米航空宇宙局(NASA)は2日、米宇宙飛行士を月に送るために設計されたカプセル型有人宇宙船「オリオン(Orion)」の打ち上げ時を想定した緊急脱出の実証試験を行い、成功した。

 実証試験はフロリダ州ケープカナベラル(Cape Canaveral)空軍基地で3分間にわたって実施された。爆発や打ち上げロケットの不具合などの際に宇宙飛行士がカプセルから脱出する状況を、ほぼ忠実に再現して行われた。

 オリオン計画の責任者マーク・キラシッチ(Mark Kirasich)氏は今回の実験について、有人月面着陸を目指す「アルテミス(Artemis)」計画における大きな一歩だと述べた。

 この緊急脱出装置(LAS)は、ロシアの宇宙船「ソユーズ(Soyuz)」が昨年10月、カザフスタンからの打ち上げ直後にエンジントラブルを起こした際、ロシアと米国の宇宙飛行士を無事生還させた緊急脱出装置の米国版。

 NASA TVで生中継された今回の実証試験で、無人のオリオンは大陸間弾道ミサイル(ICBM)の第1段を転用したミニロケットで打ち上げられた。

 打ち上げから55秒後、高度9500メートルの地点で、カプセル上部に備わったタワー状のロケット動力付き緊急脱出装置のエンジンが点火し、問題が生じたと想定されたロケット部分からオリオンを直ちに切り離した。

 わずか15秒間で、オリオンは約3000メートル上昇。その後、緊急脱出装置はカプセルの下降と自らとの分離の準備に入った。

 実際には人が乗り込むカプセルは、衝撃を緩和するためにパラシュートが展開され、大西洋に落下する。

 オリオンは着水後、ブラックボックスを排出してから沈没した。

 米宇宙飛行士が再び月面に立つのは、早くても2024年になる見込み。

 オリオンの開発はスケジュール通りに見えるが、オリオンを打ち上げる新型大出力ロケット「スペース・ローンチ・システム(SLS)」の開発が予定より遅れている。2020年6月に予定されているアルテミス計画初の無人試験飛行も、延期される見通しとなっている。(c)AFP