■月面初の悪態?

 ミッション終了。宇宙飛行士らは、2人の動作を逐一地球に伝えていた1万1000ドル(当時のレートで約400万円)の高性能カメラや使った道具などを月に残し、地球へ向かう。

 収集した標本や折り畳んだ太陽風捕獲装置は、月着陸船に内蔵されている滑車装置と物干しロープのようなワイヤを使ってつり上げ、船内に格納した。

 アームストロング氏の船外活動はすでに2時間10分に上っていた。オルドリン氏はそれより20分ほど短かった。

 ミッションは、これといった事故もなく終了した。オルドリン氏がパック入りのフィルムを落とすというパプニングはあったが、アームストロング氏がやすやすと拾い上げた。宇宙飛行士たちは月面での歩行に苦労するだろうとNASAのスタッフたちは皆、心配していた。だがそれは何の根拠もなかったことがここでも示された。

 オルドリン氏がフィルムを落とした時、地球でライブ映像を見ていた視聴者は、月面初の悪態を耳にした。ドジを踏んだ自分に腹を立てたオルドリン氏が、思わず「くそっ」と言ったのだ。

 オルドリン氏が船内に戻った。アームストロング氏は、はしごを上る途中で手すりをつかんだまま最後にもう一度周囲を見回し、それから船内に入ってハッチを閉めた。ヒューストン時間で午前1時11分。史上初の月探査が終わった。大成功だった。

 2人がはしごを上って船内に戻るわずか5分前、レーザー反射鏡がすでに完璧に作動していることをNASAは彼らに伝えていた。米カリフォルニア州から発せられたレーザー光線はすでに月に届き、反射して戻っていたのだ。