■月は死んでいる?

 午前0時15分:標本の収集が完了。2人は、27~28キロ分の石や岩を収集した。

 これで一つ目のミッションは完了。次は、月面に残していく地震計とレーザー反射鏡の組み立てだ。

 当時最も高い精度を誇った高性能地震計は非常に繊細だった。これを使ってわずかな振動を記録し、振動の原因が月面に絶えず衝突している隕石なのか、あるいは火山活動なのかを判断する。

 1年間運用する地震計の設置は、宇宙飛行士らの主要な任務だ。そこから得られるデータで、月が死んでいるかどうかを判断できるはずだ。

 レーザー反射鏡は、100個の反射プリズムから作られており、地球のさまざまな地点から届く光線を反射する。設定にかかる時間は4分程度だが、運用期間は約10年。現在(当時)はキロメートル単位でしか示されていない月と地球の間の距離を、数センチ単位まで算出可能となる。また月の正確な形や大きさ、中心部の振動なども計測できる。

 この反射装置は、月が地球から遠ざかっていく速度の算出や、地球そのものに関する情報の収集にも役立つ。こうした情報の中には、大陸間の正確な距離、その距離の変化、北極の活動、自転速度、自転軸の振動なども含まれている。

 二つの装置の設置が完了した。宇宙飛行士たちは休みなく作業をこなす一方で、月の印象や目にしたものをヒューストンの管制センターに伝え続けた。

 アームストロング氏は、月着陸船の周囲に無数の小さなクレーターがあることを伝え、クレーターを空気銃で開けた穴になぞらえた。