■「迷子」の観光客

 当局は新疆ウイグルで前例のない規模で警備上の取り締まりを行っており、自由な移動は不可能だ。AFPの記者らは、地元の担当者への連絡なしに市外に出ることはできないとして、市の境界に設置された警察の検問所で止められた。また、市全体が封鎖されることもある。

 アルトゥシュ(Artux)市の検問所では、観光客だと名乗る女性2人が現れ、「迷子」になったと主張し、その後1時間にわたりAFPの取材班にワゴン車で付いてきた。偽の交通事故現場を通り過ぎ、近くの村から収容所の写真を撮ろうとすると、女性たちも車を近くに止めた。村の警備員だと名乗る男性は、AFPの取材班を村の外に誘導したにもかかわらず、「観光客」のことは放置していた。

 宗教施設へのアクセスも厳しく規制されているようだ。イスラム教の断食月「ラマダン(Ramadan)」明けの祭り「イード・アル・フィトル(Eid al-Fitr)」の朝、カシュガル(Kashgar)にある国内最大級のモスク「エイティガール(Id Kah)」前の広場が封鎖された。イスラム教徒らはモスクに入っていったが、記者らは広場の外側に設けられた「インタビューエリア」に追いやられた。

■「われわれは監視している」

 AFP以外の外国メディアも、新疆ウイグル自治区での取材で同様の困難に直面している。

 中国・北京に駐在するジャーナリストらで組織する駐華外国記者協会(FCCC)は1月、各社の記者が尾行され、特定地域への立ち入りを阻止され、ホテルの予約さえも断られているとの報告書を発表した。

 カナダ紙グローブ・アンド・メール(The Globe and Mail)の男性記者は、警察に逮捕すると脅されたと語った。警察官がカメラを取り上げ、同意なしに写真を削除したこともあったという。

 英紙テレグラフ(Telegraph)の女性記者は、タクシーに乗っていた時に何者かが運転手に無線でUターンするよう命じたため、同僚とともに50マイル(約80キロ)近くも歩くことになったと語った。

 AFPの記者らも当局にあからさまに後をつけられていると感じることが何度かあった。カシュガルでは、記者らがほんの数分外出していた隙に、何者かが宿泊していたホテルの部屋に侵入した。記者らが戻るとドアが開いたままになっており、かばんを動かした形跡もあったが、盗まれたものはなかった。

「われわれは監視している」というメッセージは明らかだった。(c)AFP/Eva XIAO