【6月30日 AFP】中国本土への容疑者引き渡しを可能にする「逃亡犯条例」改正案の完全撤回を求める大規模デモがあった香港で30日、デモ排除で非難を浴びる警察を支持する集会が行われた。集会は数千人規模の参加者を集め、金融のハブ(中心地)である香港に横たわる政治的な亀裂を浮き彫りにした。

 今月12日に行われた「逃亡犯条例」への抗議デモでは、立法会(議会)の周囲に集結した若者中心の参加者たちを、警察が催涙ガスやゴム弾を用いて排除。警察側はデモを「暴動」としてこの手段を正当化したが、逃亡犯条例の反対派は過剰な実力行使だとして独立した調査を求めている。

 その一方、30日の集会の参加者はその多くが白や青色の服を着用し、比較的年齢の高い人々が目立った。参加者の中には中国国旗を掲げる人もおり、「逃亡犯条例」への抗議デモに規模では劣るものの、香港には今なお警察や親中派の体制への支持者も一定数存在することを示した。

 今回の集会で、70歳の参加者はAFPに対し、「警察に対する人々の態度に我慢ならない」と語った。

 54歳の会社員の男性は、「秩序の維持」に努めているだけだと警察官らを擁護。条例案反対派はやり過ぎだとし、「彼らは頭がおかしくなったようだった。警察を襲い打ちつけていた。非常にばかげていると思う」と話した。

 支持者の多くは子ども連れで参加するなど、自らを平和的な物言わぬ多数派と位置付けているが、集会では緊迫した場面もみられた。

 ある地下鉄駅の入り口では、警察支持派の群衆が、民主派のデモ参加者十数人にブーイングを浴びせ、中には罵倒する者もいた。

 1997年の中国への香港返還後最悪の政治的混乱に見舞われた香港では、固有の自由と文化を中国が親中派政権の助力を得て踏みにじっているとの懸念が特に若者の間で高まっており、逃亡犯条例への反対デモでそれが表出した形となった。

 その一方で、高齢者世代を中心に断固中国および体制側を支持し、民主派デモの参加者らに軽蔑のまなざしを向ける人々もいる。(c)AFP