【7月5日 AFP】パキスタンのムハンマド・ファイヤーズ(Muhammad Fayyaz)さん(32)は、昼はポップコーンを売り、夜は警備の仕事をして生計を立てているが、このほど長年の夢だった自作の飛行機を完成させた。ファイヤーズさんのように教育を受ける機会が限定され、チャンスをつかめない人が数百万人いるパキスタンで、この物語は多くの人の心をつかみ、空軍の注目を集めるまでにもなっている。

 ファイヤーズさんの飛行機は道路カッターのエンジンを転用し、翼は黄麻布製で、車輪は人力車のものを使っている。飛行機は現在、パンジャブ(Punjab)州中部にあるタブール(Tabur)村のファイヤーズさんの自宅の中庭に置かれており、見物にやって来る人が後を絶たない。

 ファイヤーズさんは自作の飛行機を初めて操縦した時のことについて「文字通り、天にも昇る気持ちだった。それ以外に何も感じなかった」と語った。飛行機の製作にあたっては、主にテレビ番組やネットで公開されている設計図を参考にしたという。

 パキスタンでは以前にも、無名の天才が注目を集めることはあった。2012年には、水上走行できる車を発明したとする技術者が話題になったが、後にその主張は誤りであることが科学者によって証明された。

■テレビ番組で研究

 ファイヤーズさんは子どもの頃、空軍に入隊することを夢みていたが、父親を亡くし、中学で学業を断念せざるを得なかった。さまざまな雑用を引き受けながら母親と5人のきょうだいを養った。

 大人になってからも、空を飛ぶ情熱が冷めることはなかった。自身の夢に懸けることを決め、飛行機の製作にすべてを注ぎ、働いて得たお金はすべて貯金した。

 製作にはまず情報が必要だった。飛行機の推力や空気圧、トルク、駆動力については、ナショナルジオグラフィック・チャンネル(National Geographic Channel)のテレビ番組「メーデー!:航空機事故の真実と真相(Air Crash Investigation)」を見て学んだ。