【7月1日 東方新報】このほど中国国家薬物禁止委員会弁公室が発表した「2018年中国薬物情勢リポート」によれば、2018年末までに、全国で麻薬、覚せい剤など違法薬物常用者は240万4000人(3年以上の薬物禁断後に再度常用者となった人や、死者、出国者をのぞく)で、前年比5.8%減となった。中国において薬物常用者が初めて減少に転じた。

 また、2018年に新たに確認された薬物常用者も前年比26.6%減少、うち35歳以下は31%減少。30か省・区・直轄市において、薬物にかかわる違法犯罪者のうち未成年の占める比率も下がっており、青少年の薬物汚染予防教育の成果がでているようだ。

 年齢別にみると、違法薬物常用者中、35歳以上は114万5000人で47.6%、18歳から35歳までは125万人で52%、18歳以下は1万人で0.4%を占めている。

 中国当局が摘発した薬物密輸、販売、運搬事件は7万件で、逮捕容疑者は9万8000人、押収された薬物は41.8トンに及び、それぞれ前年比31%、14.8%、36.6%減少した。

 しかし、インターネットや宅配便などのIT技術を使った新たな薬物販売業態が猛烈な勢いで拡大しており、陸海空のあらゆる輸送ルートによって薬物密輸ルートの立体化、スマート化が突出している。

 特に「ネット+物流」は薬物販売の主要手段となっている。中国禁止薬物執法部門に「薬物関係ネット摘発百日行動」によって逮捕された容疑者は2062人、押収薬物は247キロとなった。

 最高人民検察院の陳国慶(Chen Guoqing)副検察長によれば、ネットと物流を利用した薬物販売は常態化している。薬物売人は薬物を持ち歩くことはなく、ネットを利用して購入、販売し、偽の身分情報で薬物を郵送する。また第三者の支払いプラットフォームを使って匿名で代金を振り込ませるため、摘発が非常に難しくなっているという。

 中国で最も乱用されている薬物は覚せい剤で、大麻も乱用者が増えている。240万4000人の薬物乱用者のうち、覚せい剤常用者は135万人で56.1%。覚せい剤はヘロインにかわる中国で最も乱用者の多い薬物となった。ヘロイン乱用者は88万9000人で37%、ケタミン乱用者は6万3000人で2.6%だ。

 大麻乱用者は上昇し続けており、2018年末までに全国で2万4000人となった。これは前年比25.1%増。在中国の留学生や外国人、海外留学経験、海外で働いた経験がある人、あるいは芸能界関係者に多いのが特徴だ。特に大麻合法化を宣言しているカナダや米国の大麻合法州からの持ち込みが多く、2018年だけでも広州(Guagzhou)、上海、成都(Chengdu)などで国際郵便小包による密輸大麻事件が125件摘発されており、大麻および大麻製品が55キロ押収された。容疑者の多くは中国にいる外国人留学生、留学からの帰国者や海外で仕事を経験してきた中国人らだ。彼らはネットで国外の毒物を購入し、国際速達郵便などの方法で薬物を中国に持ち込むのだ。

 また、いったん薬物依存から脱却したものの再度薬物常用者となる場合、合成薬物に手を出す場合が多い。合成薬物とアヘン・麻薬類の混合乱用者数が突出しており、2018年末には31万2000人(前年比16.8%増)で、薬物常用者の12%を占める。

 最高人民検察院のデータによれば、2018年から2019年5月、全国の検察機関が摘発した薬物犯罪事件の逮捕者は13万9084人で、全刑事事件逮捕者の9.45%(前年同期比9.69%減)。2018年以来、検察機関による薬物犯罪の逮捕・起訴件数は減少しており、薬物犯罪の増加傾向に歯止めがかけられつつある。しかし、薬物犯罪は依然、全刑事事件中、危険運転、窃盗犯罪についで第3位の多さだ。国内製造の薬物に関しては中国当局の集中摘発キャンペーンの継続で抑制傾向にあるものの、「ゴールデントライアングル」(黄金の三日月地帯)、あるいは南米で製造された薬物、麻薬がさまざまなルートで中国市場に流入、浸透している複雑な情勢は改善されていない。むしろ国外の薬物の中国市場への浸透度はさらに拡大している勢いだ。

 中国では、麻薬・薬物犯罪は社会全体を汚染する重罪として、極刑が適応されている。(c)東方新報/AFPBB News