【6月28日 AFP】ワニは見た目が恐竜に似ていて、しばしば「生きている化石」と呼ばれるが、およそ2億5000万年前~5500万年前の中生代に生息していたワニの祖先は草食だったとする研究が27日、米出版社セルプレス(Cell Press)の発行する学術誌に発表された。

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 米ユタ大学(University of Utah)の博士課程で学ぶキーガン・メルストローム(Keegan Melstrom)氏と指導教官のランドール・イルミス(Randall Irmis)教授は、絶滅したワニ類16種の歯146本を高解像度スキャンし、コンピューターで解析。古代のワニの中には、どう猛な肉食動物として知られる現代のワニとは異なり、穏やかな気性の種がいたことを発見した。

 メルストローム氏は、爬虫(はちゅう)類の歯の違いを調べた自身の論文や、哺乳類の歯が生える位置によって異なる形状を持つ性質(異歯性)に関する過去の研究を参照し、スキャンした歯の形状と、食生活との関連を調査。その結果、「現生ワニと同じく肉食を主とするものもいたが、雑食の種も、完全に草食だったとみられる種もいた」ことが分かったという。

 メルストローム氏によると、これらのワニ類は生息していた時代や大陸が異なっていた。

 半水生の現生ワニと外見的にもよく似た種がいた一方、小型で陸生のワニ類もいたとメルストローム氏は指摘。こうした陸生ワニは胴体から下向きに四本の脚が生え、「毛の代わりに分厚いうろこで覆われた、イヌかネコのような生き物だったと思う」とAFPに語った。

 進化の過程においてワニの祖先がなぜ草木を主食としていたのか、なぜそれらは絶滅してしまったのかは不明だ。メルストローム氏は謎の解明に意欲的だが、それには気候や動植物相が大きく変化した中生代の生態系を再構築する試みが不可欠となる。

 いずれにしろ、今回の研究の結果、ワニが「生きている化石」と呼ばれなくなることをメルストローム氏は期待している。「この表現は、さまざまな形体と生態をもったワニ類の非常に激動に満ちた進化史を覆い隠してしまう」「その際たるものが、食の多様性だ」と同氏は述べた。(c)AFP/Issam AHMED