【6月27日 AFP】「息子たちはアメリカンドリームを追っていた」――メキシコから米国への入国を試み、国境を流れるリオグランデ(Rio Grande)川で水死したエルサルバドル人のオスカル・アルベルト・マルティネス・ラミレス(Oscar Alberto Martinez Ramirez)さんの母親ローサ・ラミレス(Rosa Ramirez)さんは、AFPの取材で涙ながらに語った。

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 川に浮かぶオスカルさんと1歳の娘バレリアちゃんの遺体を捉えた写真は26日、世界中に衝撃を与えた。

 このひどく心が痛む写真は、2人の祖国であるエルサルバドル国内でも激しい怒りを呼んだ。同国では毎日、200人近い人が同じような危険を冒す覚悟で米国を目指し出発している。

 AFPの取材に応じたローサさんは、「痛みは計り知れない。息子たちは米国にたどり着くことだけを望んでいた…より良い生活を手に入れるというアメリカンドリームを追っていた」と語った。ローサさんが住む首都サンサルバドルの東部地区はギャングの活動が活発なエリアで、オスカルさんはそこのピザ店で働いていた。

 ローサさんによると、オスカルさんと妻のタニアさん、バレリアちゃんは4月3日にエルサルバドルを出発し、メキシコ・タパチュラ(Tapachula)の移民保護施設で2か月間過ごした。米国への亡命申請手続きを開始したもののしびれを切らせて川を渡ることを決断したのだという。

  オスカルさんらは23日、リオグランデ川に入った。タニアさんは不安を感じてメキシコ側の川辺に残ったが、そこでオスカルさんとバレリアちゃんが流れにのみ込まれる様子を目の当たりにすることとなった。当時、オスカルさんはバレリアちゃんを自分のTシャツの中に抱いて川を渡っていたという。

「息子は私に、バレリアを米国で育てたいという夢を語っていた。貧困から脱し、家族のために家を買い、より良い生活を送りたいと言っていた」とローサさんは話す。そして、「私は書類を持たずに米国に行くことは非常に危険で、それほどの危険を冒す価値はないと思っていた」と付け加えた。

 エルサルバドルでは、2人が死亡したニュースを受け、遺族に寄り添うメッセージがソーシャルメディアにあふれた。同国のナジブ・ブケレ(Nayib Bukele)大統領は2人の遺体を政府の費用で帰国させるよう命じた。

 エルサルバドル移民研究所(Salvadoran Migrant Institute)のセサル・リオス(Cesar Rios)氏は、「この写真はエルサルバドル人移民の苦しみを表している。心が痛む写真で政府に移民問題への対策を求めるものとなった」と語った。(c)AFP