【10月28日 東方新報】24時間営業のセルフ図書館があれば、市民は本が借りたくなったとき、図書館に足を運ぶことなく、開館・閉館時間も気にせず、街中にあるセルフ式の貸出機から利用者の身分証などで本の貸出し・返却の手続きが簡単に完了する。2011年に中国・海南省(Hainan)三亜市(Sanya)の街中に出現したセルフ図書館は、12年11月までに同市で計18台設置された。

【写真特集】画期的なデザインの読書空間、中国のおしゃれな書店

 そして記者は先日、三亜市のセルフ図書館に足を運んだ。しかし、大部分の図書館で訪れる人を見かけることはなく、利用率は極めて低い。ある市民は「セルフ図書館なんてあっても無くてもいい」と話し、セルフ図書館の存在を理解してない市民すらもいた。

 記者は同市の解放路と金鶏嶺街の交差点口にあるセルフ図書館前に着いた。機械の中には政治、経済、法律、スポーツ、医療など各種書籍が置かれ、見たところ8~9割が新刊だ。1時間ほど留まっていたが、利用する市民は現れない。付近でお店を営む店主によると、利用するのは近隣の学生たちだけで、それでも利用率は低いと話す。

 とても便利なものであるはずのセルフ図書館だが、なぜこうも利用率が低いのだろうか。——取材に応じた地元市民の蔡さんは言う。「まず、セルフ図書館で利用できる書籍数に限りがある。私は軍事や航空宇宙分野の書籍を読むのが好きなのですが、まずここにはこのような書籍がない。これまでに3冊ほど借りたことはあるが、利用総額がデポジット納付金額の100元(約1500円)を超えて借りられないため、利用することはなくなった」

 手続き上、初回利用時に必ずデポジット100元の納付が必要のため、100元の現金支払いができず利用をあきらめた市民や、支払いが現金のみであることから、現金を持ち合わせていない市民からQRコード決済を望む声もあった。

 ある書籍方面の経営者は「スマートフォンの普及によって、読者の閲読習慣や行動様式がまさに変りつつある。これは雑誌、図書などの伝統的な閲読産業に大きな打撃を与えている」と話す。

 セルフ図書館の利用者が少ない問題について、三亜市図書館の麦争鳴(Mai Zhengming)副館長は、納付したデポジット金額を超えて書籍を借りることができない点については、100元と300元(約4600円)分のデポジット納付を調整する読者証の発行や、1人で借りられる書籍数を増やすなどの方向で進めていくという。またデポジットの支払いが現金のみであるという部分についても、今後、モバイル決済のモデルを模索し、市民の需要を満たすよう努めていくとしている。(c)東方新報/AFPBB News