飢餓や貧しさは、未解決であり身近な世界の問題だ。私たち学生も、これらの問題について話し合う機会が度々ある。そういった時に出る意見は、「これらの問題をどう解決するか」「これからの日本の対策」「私たち学生にも何か出来ることはないか」といった内容で、これらの問題に直面する人々の気持ちを深く考えることを、実はあまりしていなかったのだなと感じた。この写真に写る少年少女は兄弟で、1番歳上の姉が自分の弟と妹にメキシコの赤十字から配給されたミルクを与えている様子だ。その表情に悲壮さは感じられず、無邪気にかぶりつく少女と笑顔で見守る少年の様子は微笑ましい。干ばつによって慢性化した飢餓に悩まされる彼らにも、彼らだけの幸せがあるのだなと思った。負のイメージが強い飢餓や貧しさといった問題は、もちろん解決していくべきだ。しかし、このような環境だからこそ自覚出来る、恵まれた私たちが見落としがちな小さな幸せもあるのだな、とも私は感じたのだ。

[日本大学東北高等学校 森合 菫]

 [講評] 加来賢一(AFPWAAディレクター)
発展途上国におけるほとんどの子供たちは、恵まれた環境とはほど遠い状況で生きざるを得ないことが多くあります。AFP通信の報道写真はその現状をリアルに描写しており、時にわたしたちは取材記事から強い衝撃を受けることもあります。
今回、森さんのレポートで注目すべきは、写真が描写している内容を深く読み込んでいる点にあります。貧困という概念だけでステレオタイプ的に解釈するのでなく、「無邪気にかぶりつく少女と笑顔で見守る少年の様子は微笑ましい」とレポートする深い洞察力と感性を高く評価しました。