【6月22日 AFP】スペイン最高裁判所は21日、2016年に同国北部パンプロナ(Pamplona)で行われた牛追い祭り「サン・フェルミン祭(San Fermin Festival)」の最中に若い女性を集団レイプした罪で起訴されていた男5人全員に対して、禁錮9年という一審と二審の判決を破棄し、強姦(ごうかん)罪で禁錮15年の有罪判決を下した。一審と二審では強姦罪が認められず、より軽い性的虐待の罪で禁錮9年の判決が下されたことから、スペインでは国内各地で大規模な抗議デモが行われていた。

 2016年7月、当時24~27歳だった男たちはサン・フェルミン祭初日にパンプロナのアパートの入り口で、知り合ったばかりの酔った女性(当時18)を集団レイプした。男たちはスマートフォンを使ってその様子を動画で撮影し、メッセージサービスの「ワッツアップ(WhatsApp)」で共有。自分たちを「La Manada(「一味、群れ」の意)」と名乗り、犯行について自慢するなどしていた。

 ワッツアップで男たちが共有していた動画は検察側の証拠として法廷に提出された一方、女性が性行為中に無抵抗だったとみられることを示す被告人側の証拠としても提出された。

 一審では2018年4月、暴力行為や脅迫は認められず、被害者は抵抗や反撃をしなかったとの判断から、男5人に対し、性的虐待の罪で禁錮9年の判決が言い渡され、より重い強姦罪に関しては無罪とされた。

 スペインでは、暴力行為や脅迫が認められない限り、強姦罪は成立せず、一審の裁判官3人のうちの1人は、5人を無罪放免にすべきだと主張。この判決と男たちの保釈を受けて、国内各地で抗議デモが起き、波紋が広がっていた。

 最高裁による今回の判決文は、「事実に基づく説明では、被害者は被告人らによる性行為に同意しておらず、間違いなく脅迫によるもの」だと述べている。

 スペイン政府は一審判決の後、性行為に関して女性の明確な同意を要することを明文化するため、刑法を改正する方針を明らかにした。

 ペドロ・サンチェス(Pedro Sanchez)首相は最高裁の判決について、「イエス(と同意を示した場合)のみがイエス」だとツイッター(Twitter)に投稿し、「女性の人権と自由を擁護するために政府として前進を続けていく」と述べている。

 最高裁前に集まった約100人の女性は判決を歓迎。「闘いは無駄ではない」「もっと教育を! ソーシャルネットワーク上からポルノを減らそう!」とシュプレヒコールを上げた。

 被告の男たちの1人は被害女性の携帯電話を盗んでおり、検察側は窃盗罪についてもさらに2年を求刑し、最高裁は求刑通りの判決を下している。(c)AFP/Laurence BOUTREUX