【10月27日 東方新報】人工知能(AI)が人々の生活の隅々に入り込んで来るにつれ、AIに対する見方は当初の希望に満ちたものから、期待と心配を加えたものへと変化している。AIの発展が人々の生活や世界を劇的に変えつつある中で、どのように倫理的対応や管理を進めるかが新たな焦点となっている。

 中国政府の「新世代AI治理(注:統治管理)専門委員会」は、今年6月に発表した「新世代AI治理の原則――責任を取れるAIの発展」(以下『治理原則』)の中で、AI統治管理の枠組みと行動指南を示している。

「治理原則」の編集と発表の全過程に参加してきた専門委員会の薛瀾(Xue Lan)主任は、「主旨としては、AIの発展と統治管理のあり方を調整し、安全性と制御可能を担保しつつ、経済や社会と生態環境の持続発展と人類の運命共同体の建設を推し進めることだ」と説明している。

■「共同で責任を取れる」がテーマ

「治理原則」においては「責任を取れるAIの発展」が大きなテーマだ。「調和友好」「公平公正」「寛容共栄」「個人尊重」「安全制御」「責任共担」「開放協働」「敏速治理」など8つの原則を強調している。

 薛主任によると、この「責任を取れる」の意味合いは、AIの開発者やユーザー、管理者やその他すべての関係者が、高い社会的責任感と自律意識を持ち、法律と倫理道徳と基本ルールを厳格に守ることを意味している。これをベースにAIのチェック体制をつくり上げ、開発者、使う人、使われる人の責任を明確にする。AIの応用においては人類の「知る権利」を保障し、起こり得るリスクと影響を告知し、AIを利用した非合法活動を防止するとしている。

■「個人を尊重」しAIの悪用を禁止

 委員会の曽毅(Zeng Yi)委員によると、今回の「治理原則」の中で初めて「個人情報の授権撤回制度」を折り込んでいるという。曽委員は「われわれは個人情報の窃取、改ざん、漏えい、非合法収集などの行為に反対している。個人情報の授権を行った後でも随時授権撤回の権利がある。この点では世界で最も進んでいる。AIは社会の安全を保障し、人類の権利を尊重することが前提でなければならず、誤用を回避し、乱用や悪用を禁止しなければならない」と話す。

 薛主任は「治理原則」は一つの枠組みであり、今後はさらに細分化されたルールや業界基準、地域的取り決めなどにより、AIの発展を規範化しなければならないとしている。AIの統治管理は、今や一部の地域や国だけの問題ではない。人類共同の福祉を目標とし、人類の価値観や倫理道徳に合ったものとしなければならないと説明している。(c)東方新報/AFPBB News