■狙われる弱者

 反人身売買活動家らによると、乱獲によって世界の水産資源が急減する中、水産会社は利益を確保するために、立場の弱い外国人出稼ぎ労働者を雇用するようになっている。

 国際環境団体グリーンピース(Greenpeace)のインドネシア事務所の海洋担当活動家、アリフサー・M・ナスティオン(Arifsyah M. Nasution)氏は「安いマグロやイカがほしければ、安い労働力に頼ればいいということだ」と話す。

 世界で奴隷状態に置かれている人々に関する報告書「グローバル・スレイバリー・インデックス(Global Slavery Index)」は、一部の漁場では労働力の搾取や「現代の奴隷」が報告されていると指摘している。

 だが、消費者は海上でこうした恐ろしいことが行われていることをほとんど知らない。「商店やスーパーで買う海産物の実際のコストやそこに隠された真実についての消費者の認識は、今も極めて低い」と同氏は話す。

 人身売買の犠牲となっているインドネシア人の出稼ぎ漁業労働者の数について信頼できる推計はないが、2016年の当局の推計では約25万人のインドネシア人が「保護下にない」乗組員として外国漁船で働いているとされる。

 漁船の所有者は外国籍を取得することで自らの船に対する監視や法による監督を難しくし、厳しい労働基準や環境基準を回避しているが、労働者の大半はそのような外国船籍の漁船で働かされているとみられている。

 賠償を求める男性40人を支援する組合PPIによると、ラフマトゥラーさんを採用したマリティム・サムデラは、外国への人材派遣業務の登録は行っておらず、また一部の労働者に関する文書を偽造していた。

 ラフマトゥラーさんは約100ドル(約1万800円)の手数料を払ったにもかかわらず、基礎研修もなく、船員証書や医療証も発行されないまま、海外に送られた。

 同社に同じくだまされたという別の男性は「これ以上、被害者が出ないよう会社を罰してほしい」「私や私の友人たちで最後にしてほしい。もう十分だ」と話した。

  映像前半は貨物室で眠ったり金属が腐食して汚染された水を飲んだりする男性ら、2018年11~12月撮影・提供。後半は当時の様子を訴えるラフマトゥラーさんや男性ら、2019年2月21日、5月9日撮影。(c)AFP/Harry PEARL