【6月21日 Xinhua News】中国四川省(Sichuan)宜賓市(Yibin)長寧県(Changning)で17日、マグニチュード(M)6.0の地震が起きた。それから15時間後、地震の被害を受けた同県双河鎮(Shuanghe)南東部にある「葡萄井(Putaojing)」(湧き水)の近くで、伝統的な小吃(シャオチー、軽食やデザートを指す)「涼糕」職人の彭昌金(Peng Changjin)さんが、最後に残った30本の涼糕の筒を取り出し、最後の300杯目の「葡萄井涼糕」を作ろうとしていた。

 双河鎮の南部から流れ出る湧き水は、湧き上がる様子が葡萄の粒のようであることから、地元の人々に「葡萄井」と呼ばれている。1000年以上の歴史を持つ「葡萄井涼糕」は、この湧き水で作られ、同地ひいては四川省でも人気のある有名な小吃となっている。

 しかし、地震で状況が一変した。記者が18日に葡萄井を訪れると、ここの湧き水は出なくなり、あたりは黄色い泥や粉々に砕けた石板で埋め尽くされている。「葡萄井涼糕」の店では客用のテーブルやイスが散乱し、看板も斜めにぶら下がり、建物の梁(はり)にひっかかっている。

 彭さんは「うちには昨日作った最後の涼糕30桶が残っていて、あと300杯作ることができる。最後の『葡萄井涼糕』を売り切ってしまう」と言うと、涼糕への想いを抱きながら、長年使ってきたテーブルやイスを外に並べ出した。

 「『葡萄井涼糕』が残り最後になった。みんな早く食べに行こう!」と誰かが叫んだら、地元の人々が地震の被害を忘れたかのように、彭さんのお店に次々にやって来た。彼らは、「これは『最後』の涼糕だ。早く食べないとなくなってしまうから、食べに行こう」と残念がった。

 記者が去る頃には、300杯の「最後」の涼糕はほぼ売り切れていた。湧き水が出なくなってしまったことから、「葡萄井涼糕」が二度と味わえなくなるのではないかと地元の人々が心配している。

 幸いに19日には、水が再び湧き出したが、「葡萄井涼糕」作りはまだ再開されていない。(c)Xinhua News/AFPBB News