【6月20日 AFP】温室効果ガスの排出が現在のペースで続けば、北極圏のデンマーク領グリーンランド(Greenland)の氷床は1000年後には完全に解けてなくなってしまうと示唆する研究結果が、米科学誌サイエンス・アドバンシズ(Science Advances)に発表された。

 グリーンランドの氷床には、完全に融解すると世界の海面を7メートル上昇させるほどの氷が存在するとされる。

 米アラスカ大学フェアバンクス校(University of Alaska Fairbanks)地球物理学研究所のアンディ・アシュワンデン(Andy Aschwanden)准教授が筆頭著者を務めた新研究は、航空機から氷の状態の変化を観測する米航空宇宙局(NASA)の「アイスブリッジ調査(Operation IceBridge)」のデータを使用。川のように海へ流れ出ている「溢流(いつりゅう)氷河」の観測が従来より正確な予測モデルを用いた。

 この研究に関するNASAの声明によれば、溢流氷河は氷床の融解過程において大きな影響を持つが、従来予測モデルではその複雑な流れを把握しきれていなかった。だが、今回の研究で、今後200年のうちにグリーンランドから失われる氷塊の最大40%を溢流氷河が占める可能性が明らかになった。

 過去20年間の海水温の上昇によって、かつて溢流氷河をせき止めていた浮氷(ふひょう)が融解しつつある。その結果、「溢流氷河は流れる速度が増し、解けて縮小しつつある。また、氷床表面高度が下がることで、内部の氷が暖かい空気にさらされて解けている」という。

 この最新モデルによると、現在のペースでグリーンランドの氷床が融解すれば、今後200年のうちに世界の海面は48~160センチ上昇し、従来予測よりも80%高くなる可能性があるという。(c)AFP