国境は、人と人を引き裂くものであってはならない。
この写真はアメリカ・トランプ大統領の移民政策によって移民の親子が引き離されたことに対して行われたデモの様子である。家族を引き離すことが政治的理由で正当化されてしまうようなことは、あってはならない人権侵害だろう。
移民によって始まったアメリカの歴史は新しい局面を迎えた。トランプ大統領はアメリカ第一主義を掲げ、移民を拒んでいる。この少年が訴える”WE ARE ALL IMMIGRANTS”の言葉はアメリカ第一主義者の心にどう響くのだろうか。

津田塾大学 鎌澤 歩 移民セクション

[講評] 羽場久美子(青山学院大学国際政治経済学部教授)
移民排斥の動きが先進各国で広がる中。現状を打ち破る、21世紀の幕開けにふさわしい、記憶に留めておく一枚として、緑の中をプラカードを掲げて行進する少年と女性たちの写真を選ばせていただいた。
国境は閉じるものではなく、結ぶもの。―トランプの移民の家族の引き離し政策、「自国ファースト」に対して、「私たちはみな移民」「人種主義は間違っていることを示そう!」「お母さんたちは、家族が離れ離れになるのに反対」などのプラカートを掲げて、緑と光の中、ワシントンDCを行進する子供や母親たち。子供の目も、母親の目も、未来を見据えている。
宇宙飛行士の毛利衛さんは、宇宙から見た地球は青く美しく、国の境界線にはラインが引かれていなかった、ラインは人間がひいたのだ、と語っている。
アメリカ・ヨーロッパで広がる人種主義に対して、子供や女性たちが立ち上がれば、未来は変えられる! そう信じられる1枚である。
選者のキャプションにも、透徹した深い思想がある。21世紀の将来を象徴する作品として、この写真を選ばせていただいた。