■おとり作戦

 ガットヘインズ氏は1998年、月の石を取引する犯罪者らを捕らえるためのおとり作戦「Operation Lunar Eclipse(月食作戦)」を開始した。米郵政公社(US Postal Service)のボブ・クレッガー(Bob Cregger)氏と共に身分を偽り、ジョンズ不動産という架空の企業を立ち上げ、USAトゥデー(USA Today)紙に「月の石買います」と広告を出した。

 しばらくするとアラン・ローゼン(Alan Rosen)と名乗る男から、本物の月の石を500万ドル(現在のレートで約5億4000万円)で売りたいと連絡があった。

 ローゼンはマイアミにある銀行の金庫室で月の石を「取引の相手」に手渡した。そして、銀行員のふりをしていた米税関当局の職員によってその場で取り押さえられた。

 ガットヘインズ氏は「実際に押収するまで、その月の石がアポロ17号が持ち帰り、ホンジュラスに贈られたものだとは知らなかった」と話す。またそのいきさつについては、ホンジュラスで軍事クーデターが起き「政権の座に就いた独裁者が、部下の大佐に感謝のしるしとして贈ったものだった」と説明した。

 このホンジュラスの大佐はもともと100万ドル(約1億800万円)で石を売ろうとしていたが、ローゼンは5万ドル(約540万円)まで値切って購入したという。

 この月の石は1年にわたる裁判の後、ホンジュラスに返還された。