【6月14日 AFP】タイ初のトランスジェンダー国会議員となったタンワーリン・スカピシット(Tanwarin Sukkhapisit)氏は5日に行われた首相指名選挙で、満面の笑みを浮かべて自らの一票を投じた。タイはLGBT(性的少数者)に寛容だといわれているが、一般の人々の間での理解や社会での機会均等はいまだ進んでいない。

 年長の国会議長が投票を促す際、タンワーリン氏のことを「ミスター・タンワーリン」と呼んだのがそれを表している。選挙では元陸軍司令官のプラユット・チャンオーチャー(Prayut Chan-O-Cha)氏が首相に選出された。

 反軍事政権を掲げる革新的な新未来党(Future Forward Party)から出馬したタンワーリン氏は、下院議員となった4人のトランスジェンダーの一人だ。この4人は、教育、雇用、家庭での差別が残る社会の先駆者的存在となった。

「私はお飾り議員ではない」とタンワーリン氏はAFPの取材に語る。「タイの政治に新たな歴史を刻みたい」

 タイのトランスジェンダーは社会で一定の立場を確立しているが、それでも仏教徒が大半を占める保守的な国では困難に直面することも多い。

 トランスジェンダーらはコマーシャルや映画に出演し、ファッション誌の表紙を飾り、年間1000万人以上が視聴するトランスジェンダー女性のための美人コンテスト「ミス・ティファニー(Miss Tiffany)」まで開催している。

 だが、メディアはトランスジェンダーを、いじわるで品のない存在として面白おかしく描くことが多い。また、教員や公務員といった仕事に就くことは難しく、多くの人が娯楽関連の仕事や性産業に押し込められる。

 タンワーリン氏は「タイ人はトランスジェンダーを受け入れてはいるが、同等の存在あるいは同等の権利を持つ人々とはみなしていない」と指摘する。