■有名になった銃乱射事件は「伝染」を助長する

 こうした事態に歯止めをかけるため、当局は現在、事件を起こして有名になろうとする多くの銃撃犯の思惑を阻止しようと努めている。

 今年5月、米バージニア州バージニアビーチ(Virginia Beach)の市庁舎で市職員が銃を乱射し、12人が死亡した事件では、警察や議員らは犠牲者に哀悼の意を表した一方で、犯人の名前をできるだけ口にしないよう留意した。

 地元警察のジェームズ・サーベラ(James Cervera)署長は、「私は一度しか口にしなかった」とインタビューで話しており、記者会見で銃撃犯の氏名を公表した後は、「容疑者」あるいは「銃撃犯」と呼ぶにとどめたという。

 専門家らは、有名になって世間に認められようとする銃乱射事件の犯人が、他の同様の事件の犯人に感化される「模倣効果」は実際にあると指摘する。

 アリゾナ州立大学(Arizona State University)のシェリー・タワーズ(Sherry Towers)教授(数学)は、通常は疾病の研究に用いられるモデルを銃乱射事件に応用。多くのメディアの注目を集めて一躍世間に知れ渡った銃乱射事件は、他の人々への「伝染」を助長するとAFPに語った。

 また米アラバマ大学(University of Alabama)のアダム・ランクフォード(Adam Lankford)教授(犯罪学)は、ハリウッド(Hollywood)の映画スターと同じくらいメディアの注目を集める銃乱射事件の犯人もいると指摘し、「それこそが、模倣犯が求める報酬だ」と主張。「無名の存在でいるよりは悪名を得た方がいいと言い切る犯人もいる」と語った。

 タワーズ教授によると、報道機関や政治家の間では、加害者に世間の注目を集めるべきではないとの認識が高まっているという。

 ニュージーランドのジャシンダ・アーダーン(Jacinda Ardern)首相は、今年3月に同国クライストチャーチ(Christchurch)にあるモスク(イスラム礼拝所)2か所が襲われ51人が死亡した銃乱射事件の後、犯人の名前に一切言及しないと宣言した。