【6月11日 時事通信社】トランプ米大統領と北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長の首脳会談がシンガポールで開催されてから12日で1年。トランプ氏は「交渉の達人」ぶりを発揮し、正恩氏を第三国に引きずり出して非核化の実行を迫ったが、2月末のハノイでの2回目の首脳会談で決裂。北朝鮮はこれを受けてミサイル発射で米国を揺さぶり、対話路線に逆行する動きを見せる。

 「適切な時期に正恩氏に会うことを願っている」。トランプ氏は5日、訪問先のアイルランドで記者団にこう語り、3回目の首脳会談実現に意欲を見せた。ただ、現段階で米朝協議の具体的な方向性が見えているわけではない。

 ハノイ会談が物別れに終わった後、北朝鮮は米国批判を急速に強め、短距離弾道ミサイルも発射した。しかし交渉を継続したいトランプ氏は「気にしていない」と問題視しない構え。ミサイル発射を「国連安保理決議違反だ」と断言したボルトン大統領補佐官(国家安全保障担当)らについて「私は違う見方をしている」と語った。

 ハノイ会談では、すべての核放棄を迫った米国と、寧辺の核施設廃棄と引き換えに主要制裁解除を求めた北朝鮮の立場の違いが鮮明になった。このためトランプ政権は、実務レベルで非核化の定義や行程表などを協議する必要があるとみている。だが、ビーガン北朝鮮担当特別代表は4月、崔善姫第1外務次官に対話を呼び掛ける書簡を送ったものの、返事はないという。

 一方、正恩氏は4月12日の最高人民会議で「年末までは忍耐心を持ち、米国の勇断を待ってみる」と述べ、交渉期限を通告した。米シンクタンク戦略国際問題研究所(CSIS)のスミ・テリー上級研究員は「北朝鮮は年末に向けて、米国から譲歩を引き出すために短距離ミサイル発射などで圧力をかけ続ける」と分析するが、米側は非核化の進展なしに制裁解除に応じない方針だ。

 トランプ氏は来年11月の大統領選での再選に向けて、北朝鮮の非核化を外交成果にしたい考え。しかし現状は北朝鮮が長距離弾道ミサイルの発射を自制しているものの、核物質のほかミサイルは一発も廃棄されていない。

 こう着状態が続いたまま「年末」の期限を迎えれば、北朝鮮がさらに射程の長いミサイルの発射などで神経戦を繰り広げるとの見方もある。選挙イヤーに突入するトランプ氏は外交交渉に注力するのは難しく、米朝の対立が再び先鋭化しかねない。(c)時事通信社