■仲裁は困難

 一方、イラン側の観測筋は安倍首相がイランと米国との間でメッセージを伝達する役割を担うだろうとみている。

 安倍氏の訪問に先立ってイランのイブラヒム・ラヒームプール(Ebrahim Rahimpour)元外務次官は日刊紙シャルグ(Shargh)に、「トランプ氏との日本での会見後に安倍氏がイランを訪問するということはすなわち、米国がこの外交ルートを利用することに関心を持っているということだ」と指摘している。

 しかし日本がイランと長年にわたって外交関係を持ち、また米政府と良好な関係にあるとしても、専門家らは安倍氏に双方に対する影響力はほとんどないとみており、仲裁は困難と予想している。

 コンサルタント会社テネオ(Teneo)のアナリスト、トバイアス・ハリス(Tobias Harris)氏は安倍氏のイラン訪問について「かなりの障害に直面することになり、成果は得られそうにない」「日本が両国と良好な関係にあっても、必ずしもそれがそのまま影響力を意味するわけではない」との見方を示した。

■目指すは「シャトル外交」?

 また日本はただのメッセンジャーではない、自国の利益も危うくなっているのだ。米国のイラン制裁再開前、日本は原油全体の約5%をイランから輸入しており、原油高騰のあおりを食う可能性もある。

 さらに北朝鮮やロシアをめぐるここ最近の外交の成果が期待外れなものであることを考えると、今回のイラン訪問は安倍首相に国際的な政治家としてまれな役回りを与えるものとなる。

 ただ、期待は当面低いままであろうとアナリストらはみている。早稲田大学(Waseda University)大学院政治学研究科客員教授の加藤哲郎(Tetsuro Kato)氏は、中東問題で日本が積極的な役割を果たしたことはなく、結果に関して大きな期待はしていないと語る。

 ボーザック氏も早急に何らかの結果を期待するのは「現実的ではない」と述べ、「現時点での焦点は軍事的対立を和らげることであり、安倍氏にできることはコミュニケーションを絶やさせないためのシャトル外交だ」「そのシャトル外交だけでも緊張緩和には十分かもしれない」と強調した。(c)AFP/Sara HUSSEIN