【7月1日 AFP】日焼けした肌とシャギーヘアが似合うグエン・タイ・ビン(Nguyen Thai Binh)さん(29)は、ベトナム南部の砂丘でスノーボードの練習をするためにサンダルから丈夫なブーツに履き替えた。ビンさんは、ベトナムのトップスノーボーダーの一人。雪が降らない東南アジアでウインタースポーツを推進する草分け的存在だ。

「スノーボードは、ベトナム人にはとても新しいスポーツ。この国には練習できる雪山がありません」。米スノーボードブランド「クイックシルバー(Quicksilver)」のキャップをかぶり、派手なボードショーツを履いてクールなカリフォルニア風のファッションで決めているビンさんはそう話す。

 ベトナム北部サパ(Sapa)の山々は、冬季に時折、雪がちらつくことはあるものの、スキーやスノーボードができるような雪山は存在しない。そのためビンさんは、同国南部ビントゥアン(Binh Thuan)省ムイネー(Mui Ne)にある起伏の激しい砂丘でスノーボードの練習をしている。この砂丘は、絵のように美しい景色と四輪バギーのアトラクションで観光客にも人気の場所だ。

 ビンさんは2017年、札幌で開かれたアジア冬季競技大会(Asian Winter Games)で世界の舞台にデビューした。日本と韓国、中国が長年、トップを占めてきた同大会にベトナムのチームが参加するのはそれが初めてだった。

 大半のチームメートと同様、ビンさんも札幌の大会で生まれて初めて雪を見た。ベトナム代表のスキー選手らも、砂の上でしか練習経験がなく、ムイネーの砂丘で木の枝をストック代わりに回転競技の練習をしただけだった。

「戸惑ってしまった。砂丘でしばらく練習していたので技術力は身に付いていたが、本物の雪はつるつると滑りやすかった」とビンさんはAFPに語った。

 ベトナム代表チームは無冠に終わったが、胸を張って大会を後にした。

「僕たちは、高い順位を目指して札幌に行ったわけじゃない。自分たちを試しに行ったんです」。彼はAFPにそう語った。(c)AFP/Jenny VAUGHAN / Tran Thi Minh Ha