【6月11日 AFP】ロシアで先週、調査報道で知られる独立系メディアの記者が麻薬密売容疑で逮捕されたことに対し、独立系だけではなく親政権派のジャーナリストらからも釈放を求める声が上がり、当局は世論の異例の反発に直面している。

 逮捕されたのは、ロシア語の独立系ニュースサイト「メドゥーザ(Meduza)」のイワン・ゴルノフ(Ivan Golunov)記者(36)。合成ドラッグのメフェドロンやコカインを「大量に」売ろうとしていた疑いが掛けられており、有罪となった場合には最高20年の禁錮刑が科される可能性があるが、弁護団は事件は仕組まれたものだと主張している。ゴルノフ記者自身は、葬儀業界の疑惑を調査していたために拘束されたと考えている。

 今回のゴルノフ記者逮捕に対し、ほとんどのメディアが政権筋の見解に従うロシアにしては珍しく、報道関係者らの連帯が生じている。

 10日にはロシア三大新聞のコメルサント(Kommersant)、ベドモスチ(Vedomosti)、RBKが一斉に1面トップに巨大な文字で「私は/われわれはイワン・ゴルノフ」というメッセージを掲載。政権に対し公然と抵抗する行動に出た。このメッセージは2015年にフランスの風刺週刊紙シャルリー・エブド(Charlie Hebdo)が襲撃され12人が死亡した事件が起きた際に、犠牲者に連帯を示すスローガンとして広まった「私はシャルリー」に基づいている。

 1面に共同声明を掲載した3紙は、ゴルノフ記者の逮捕は脅迫行為に当たると主張し、同記者を拘束した警官に対する捜査を要求した。新聞を売るモスクワの売店の多くで10日午後の早い時間帯までにこの特別版が売り切れた。3紙はすべて民間企業だが、このところ政権による報道統制の圧力がますます強まっていた。