【6月11日 AFP】米グーグル(Google)は2018年、ニュースサイトを巡回して記事の情報を抽出する「クローリング・スクレーピング」行為により、ニュース記事の掲載元に対価を支払うことなく約47億ドル(約5100億円)の収益を得たとする調査報告が10日発表された。

 調査は大手ニュース企業から小規模ローカルニュース、ウェブ専門ニュースメディアまで2000近い報道機関が加盟する米業界団体「ニュースメディア連合(News Media Alliance)」(旧「米新聞協会Newspaper Association of America」)の資金で行われたもの。グーグルやメディア専門家からは内容に異論が出ている。

 ニュース産業はこれまでも、グーグルなどの巨大インターネット企業がインターネット上におけるニュースのエコシステム(生態系)を支配し、そこから生じる広告収入を握ることで、従来からある報道機関に損害を及ぼしていると主張。今回の報告はこれを支持する内容となっている。

 報告は、グーグルは自社エコシステムへの消費者の囲い込みに取り組む中でニュースコンテンツからの収益を増大させており、ニュース検索機能を利用者データの収集に使い、他の商品を個々の利用者に合わせて調整するため使用していると指摘した。

 報告は今週、大手テクノロジー企業各社の独占禁止(反トラスト)法違反をめぐる議会公聴会に提出される見通し。また、議会は現在、ニュース各社を限定的に反トラスト規定から除外し、デジタルコンテンツ収入をめぐる大手テクノロジー企業との交渉に連帯して臨めるようにする法案を審議しており、報告はその成立に寄与するものとみられる。

 一方、グーグルやメディア専門家らは調査結果に異議を唱えている。

 グーグル広報は「多くの専門家が指摘している通り、一連の計算は拙速かつ不正確なものだ」と表明。「ニュース検索では、広告が表示されないことが圧倒的に多い。また、調査結果はグーグルが提供する価値を無視している。グーグルニュース(Google News)、グーグル検索(Google Search)は毎月、記事掲載元のウェブサイトに向かうクリックを100億回余り生じさせている。これにより(掲載元に)購読者の増加や相当な広告収入がもたらされる」とした。

 他の専門家らも、今回の調査の手法と結論に疑問を呈している。

 ニューヨーク市立大学(City University of New York)のジェフ・ジャービス(Jeff Jarvis)教授(ジャーナリズム)は、調査は検索結果に表示される「スニペット(概要文)」に依拠していることなどから、欠陥を抱えていると指摘する。

 同教授はツイッター(Twitter)に「検索におけるスニペットはコンテンツではない」と投稿。スニペットは「掲載元へのリンクだ。グーグルはグーグルニュースで収益を上げていない。ニュースから収益が上がるのは、掲載元サイトに広告を提供した場合だ」とした。