■エベレストでの「来世」

 ネパールの警察当局は、この遺体について外国公館へ通知したり支援を求めたりするため、さまざまな行政処置を講じているものの、身元が特定されるまでには数年を要する可能性もあるという。

 ネパール山岳協会(Nepal Mountaineering Association)元会長のアン・ツェリン・シェルパ(Ang Tsering Sherpa)氏は、「困難な任務」であり「遺体に関する情報、特に発見場所の情報をもっと共有し、登山会社に働き掛けなければならない」と語った。

 エベレストでは、登頂を目指す登山隊の遠征が1920年代に開始されて以降、300人超が命を落とし、氷や雪、クレバスの中にどれだけの遺体が隠されているのか分かっていない。

 1924年にエベレスト登頂に挑み、行方不明となった英国人登山家のジョージ・マロリー(George Mallory)氏の遺体は、1999年になってようやく見つかった。同行者だったアンドリュー・アービン(Andrew Irvine)氏の遺体は、今も見つかっておらず、二人が登頂に成功していたのかどうかは、今も謎のままとなっている。

 その一方、カラフルな登山装備を身にまとった一部の遺体はニックネームが付けられ、山頂を目指す人たちの道しるべとなっている。

「緑のブーツ(Green Boots)」と名付けられた遺体は、1996年の遠征で亡くなったインド人登山家とみられるが、2014年に登山道から消えてしまったという。

「眠れる美女(Sleeping Beauty)」と名付けられた遺体は、1998年に米国人女性として初めて無酸素登頂を果たしたものの、下山中に亡くなったフランシス・アーセンティーブ(Francys Arsentiev)氏とされる。だが2007年になって、彼女の遺体は遠征隊によって山中に埋葬された。(c)AFP/Paavan MATHEMA