■首都マニラの未来を予兆?

 忍び寄る湾岸水域の拡大により、住民や土地が危機にさらされている。その脅威は毎年フィリピン諸島を襲う約20回の暴風雨がもたらす高潮と洪水によってさらに増幅されている。

 地域の災害対策当局者はAFPの取材に対し、農村を主とするマニラ北方の沿岸部から、過去数十年間に少なくとも5000人が退去を余儀なくされたのは、湾岸水域がさらに内陸に広がったためだと説明した。

 この沈下が常態化する可能性が非常に高いのは、被害の最も大きい地域の地盤がほとんど粘土質のためだ。粘土は水が引くと固まる性質がある。

 パリアハンのような街の運命は、首都マニラの人口1300万人の一部を待ち受ける諸問題の予兆となっている。

 この問題を追究する科学者グループの一人、ナロド・エーコ(Narod Eco)氏はAFPに対し、マニラ湾沿岸部でも一部沈下が進行しており、その主な原因は過剰な地下水くみ上げである可能性が高いと指摘する。だが、この地域の沈下は北部沿岸の各地より遅く、その理由は地下水のくみ上げが少ないか、土壌が違うためだろうと語った。