■今、何が起きているのか?

 巨大IT企業に対しては、米司法省や米連邦取引委員会(FTC)の両方による捜査や、下院司法委員会(House Judiciary Committee)における公聴会が行われる可能性があり、後者はすでに調査が開始されている。

 元司法省の独禁法担当専門家で、現在はセンター・フォー・デモクラシー&テクノロジー(Center for Democracy & Technology)の特別研究員であるエイブリー・ガーディナー(Avery Gardiner)氏は、これらの機関は常にIT企業の営業実態を監視しているが、最近の調査権限の分割は、より厳しい姿勢を示すことの表れだろうと指摘する。

 元米連邦通信委員会(FCC)の顧問弁護士で、現在はブルッキングス研究所(Brookings Institution)の特別研究員であるブレア・レビン(Blair Levin)氏は、「調査に1~2年かかるかもしれないし、訴訟は長期間に及ぶかもしれない。さらにその後、上訴が行われる可能性もある」「その間に大統領選が行われるため、訴訟プロセスに多くの変更が生じる可能性もある」と語った。

 米テネシー大学(University of Tennessee)のモーリス・ストック(Maurice Stucke)教授(法律学)によると、EUでの訴訟で米規制当局にとっての「ロードマップ(行程表)」が作られたため、訴訟プロセスは効率化される可能性があると指摘する。

 下院司法委員会での公聴会は、法的措置の範囲には含まれないとみられるが、IT企業を窮地に陥らせる証拠、あるいは最終的に独占禁止法違反を示すような証拠が明らかになる可能性もある。

 またデジタル時代にふさわしい法律への改正を行う取り組みとして、米議会は反トラスト法(独占禁止法)の見直しを行う可能性もある。

 さらに公聴会では、IT企業のビジネス手法が白日の下にさらされることになるため、2020年の大統領選を前に法的措置への国民の支持が高まる可能性もある。

 だが反トラスト法の推進に反対する専門家らは、独占禁止関連法はデータ保護やプライバシーに関する問題の処理には適しておらず、それらに対しては別の法的取り組みが必要だと述べている。