【6月5日 AFP】深夜のトイレや外出時など、転倒によって命を落とす米国人高齢者が増えているとの調査結果が4日、発表された。調査結果によると、転倒による死亡リスクが2000年から倍増しているという。同様の傾向は、欧州でも観察されている。

　米国では、転倒を原因とする75歳以上の死亡者の数は2000年～2016年でほぼ3倍増（8613人から2万5189人）となっている。米国医師会雑誌（JAMA）に掲載された論文によると、2000年以降の人口増加を考慮に入れたとしても、これは転倒による死亡率の倍増に相当するという。

　今回の研究を主導したのは、オランダのライネル・デ・グラーフ（Reinier de Graaf）病院のクラース・ハルトホルト（Klaas Hartholt）氏だ。

　米フロリダ大学（University of Florida）老化研究所のマルコ・パホル（Marco Pahor）所長は、JAMAに同時掲載された高齢者の転倒問題に関する解説記事で「65歳以上の約3人に1人が毎年転倒している」と記し、「転倒は高齢者にとって、命を脅かす大惨事となる恐れがある」と書いた。

　だが、転倒が招く結果は頭部外傷や内出血による死亡の危険性だけにとどまらない。腰、膝、足首などの骨折では、入院、自立性の低下、リハビリ、気力と心の健康への長期的な影響など、悪循環の始まりとなる恐れがある。

『Being Mortal（邦題：死すべき定め）』の著者であるアトゥール・ガワンデ（Atul Gawande）医師によると、腰を骨折した人の5人に1人は二度と歩けなくなるという。

　米国では、転倒に関連する病院治療費は最も高額な部類に入る。パホル所長はAFPの取材に「転倒は高齢者の間で新たな流行病になり始めている」と話した。