■カバーした理由は──カナダの先住民族言語の状況

 スティーブンスさんは、カナダ放送協会(CBC)のアート系番組「q」のインタビューで、マッカートニーさんがコンサートで自分たちのカバーについて話したと知って本当に興奮して泣きそうになったとコメント。「私は毎日ビートルズを聴いて育ちました。父が大ファンだから」。

 さらにスティーブンスさんは「私の文化は私の人生で一番大切なものの一つなんです」と語り、「コミュニティーの外にいる人たち、ミクマク語を話さない人たち、ミクマク語が分からない人たちに私たちの文化を伝えると、そういった人たちに新たな視点を提供し、私たちの言語がとても美しいことを知ってもらえます」と説明した。

 カバー曲のレコーディングを手配したスティーブンスさんの音楽教師カーター・チアソン(Carter Chiasson)氏はAFPの取材に対し、「このレコーディングを通じて先住民の言語と文化を保存することの大切さを広めたい」と語った。また「多くの民族の言語が消滅の危機に直面しており、あと数世代でなくなってしまう可能性もある」と指摘した。

 カナダ政府の統計によると、同国では今も12語族70以上の先住民族言語が話されている。国勢調査によると、先住民族160万人のうち先住民族言語のネーティブスピーカーは26万人。国連教育科学文化機関(UNESCO、ユネスコ)によると、カナダの先住民族言語のうち4分の3が消滅の危機にひんしている。

 話者が約170人しかいないクテナイ語(Kutenai)のような言語もあれば、クリー語(Cree)のように話者が約9万6000人という言語もある。ミクマク語はアルゴンキン語族の中で最も広く使用されている言語の一つで、話者人口は約9000人。

 先住民族言語の保存と、カナダの法律を国連(UN)の「先住民族の権利に関する宣言(Declaration on the Rights of Indigenous Peoples)」に調和させることを目的とした2つの法案が現在、上院で審議されている。(c)AFP