【6月4日 AFP】中国政府が3日、学生や学者らに米国で就学することへの「リスク」を警告したことに対し、米国務省は同日、「正規の」学問のために訪米する中国人は歓迎するとの談話を発表した。一方で査証(ビザ)申請に対する米当局の審査が厳格化していることも認めた。

 米中貿易戦争が激化する中、中国教育省は自国の学者や学生らに対し、米当局によるビザ申請の却下や発給遅延といった事例が生じており、相応の備えをするよう警告していた。

 これに対し米国務省報道官は、米国滞在中の留学生が外国の情報機関に取り込まれる事例が増えていることを把握して以来、ビザ発給の際の審査を厳格化していると述べた。ただ、ビザ申請者の圧倒的多数である正規の旅行者に対しては敏速かつ明確な決定を出すため、最高水準のサービスを提供するよう尽力しているという。

 国務省報道官は大半の申請者には最長期限である5年間のビザが発給されていると指摘した上、「正規の研究活動を行うために訪米する中国人の学生や学者は歓迎している」と述べた。

 一方、中国教育省で海外学術交流を担当する高官は、ビザ申請の却下によって中国人学生の「尊厳が傷つけられている」と主張。同高官が中国中央テレビ(CCTV)に語ったところによると、今年1~3月の間に1350人を超える中国人学生が米国の留学ビザを申請したが、全体の13.5%に当たる182人が発給でつまずき、予定通りに留学できなかったという。

 さらに同高官は中国国家留学基金管理委員会(China Scholarship Council)のデータを引用し、昨年はビザ問題で留学できなかった学生は申請者全体の3%超にすぎなかったと指摘している。

 中国人留学生の減少は米国にとっても経済的打撃となり得る。全米の大学に通う留学生のうち最も多いのは中国人で、昨年は36万人が在籍しており、その多くが高額な学費を全額納めている。

 中国に続いて米国への留学生が多いのはインドだが、その数は20万人を下回り大きな開きがある。

 またある業界団体の統計によると、2017年に中国人留学生が米経済に貢献した額は140億ドル(約1兆5100億円)に上るという。

 米中貿易戦争では中国による技術や知的財産の窃盗が米国側の不満として大きな争点となっており、米連邦捜査局(FBI)のクリストファー・レイ(Christopher Wray)長官は4月、中国政府が米国における経済スパイ活動に中国人の大学院生や研究員を利用していると指摘している。(c)AFP/Shaun TANDON, with Poornima Weerasekara in Beijing