【5月31日 AFP】米金融大手JPモルガン・チェース(JPMorgan Chase)は30日、育児休暇をめぐり差別されたとして男性社員らが起こした集団訴訟で、原告側に500万ドル(約5億4400万円)を支払うことで和解した。ウォール街(Wall Street)で働く父親たちにとっては、大きな勝利だ。

 この集団訴訟は、2011~17年に育児休暇を申請した男性社員らが、女性社員と同じ取得期間が認められなかったのは差別だと主張して起こしたもの。米国自由人権協会(ACLU)のオハイオ支部と法律事務所が原告代理人となり、総資産額で米銀行トップのJPモルガンを提訴していた。

 最初に問題を提起した男性社員デレク・ロトンド(Derek Rotondo)氏は、息子が生まれた時、「主な育児の担い手」として14週間の育児休暇を申請した。しかし、人事部の返答は、14週間の育児休暇が認められるのは女性社員だけだというものだった。

 JPモルガンの社内規定は、女性社員のみを「主な育児の担い手」とみなし、給与100%支給で最大16週間の育児休暇を取得する権利を付与していた。

 一方、ACLUによると、男性社員は「共同育児者」とみなされ、2週間を超える育児休暇が認められるのはパートナーが「対応できない」場合か、すでに復職済みと証明できた場合に限られていた。

 ロトンド氏は、ACLUを通じて「私は、子どもたちを愛している。彼らが生まれた時、一緒に過ごしたかっただけだ」との声明を発表。「私が訴えて以降、会社が方針を明確にし、男女を問わず『主な育児の担い手』となることを希望する社員にこれらの福利厚生を受ける平等な権利を保障するようになったことを誇りに思う」とコメントした。

 JPモルガンは和解金500万ドルの支払いに加え、性別による差別のない新たな休暇取得方針について、社内教育を実施していく。

 ウォール街では育児休暇の規定は金融各社によって大きく異なる。バンク・オブ・アメリカ(Bank of America)は実子・養子を問わず全ての親に最大26週間の育児休暇を認めているが、シティグループ(Citigroup)は母親にのみ16週間の育児休暇を認め、父親と養父母には8週間しか認めていない。(c)AFP/Luc OLINGA