【5月29日 AFP】中国国営メディアは29日、同国政府が米中貿易戦争での米国への対抗措置として、レアアース(希土類)の輸出を制限する可能性に言及する報道を行った。レアアースは、スマートフォンから軍事装備まで、精密機器の製造に不可欠な重要資源。

 米中貿易協議が行き詰まる一方で、ドナルド・トランプ(Donald Trump)米大統領は中国からの輸入品に対する関税を引き上げ、また今月には中国通信機器大手・華為技術(ファーウェイ、Huawei)の締め出しに動いた。中国側のレアアース輸出に関する今回の警告は、両国の対立が深まる中での新たな一撃だ。

 中国国営新華社(Xinhua)通信は29日、「中国に対して貿易戦争を仕掛ければ、米国はその技術力の維持に不可欠な原料の供給を失うリスクを冒すことになる」という論説を掲載した。

 レアアースとは、スマートフォンからテレビ、カメラ、電球といった無数の製品の製造に必須とされる17元素を指す。世界のレアアースの95%以上を産出しているのが中国で、米国はレアアース輸入の80%以上を中国に頼っている。

 中国はこれまで政治的駆け引きにレアアースを利用していると非難されてきた。日本の業界筋によると、2010年に領土問題でアジア諸国と対立した際にも、中国はレアアースの輸出を一時的に停止している。

 ただ一部のアナリストからは、世界がレアアースの調達先の多様化を急ぐことを危惧する中国は、レアアースの輸出規制には実は慎重だという見方も出ている。(c)AFP/Laurent THOMET