【5月26日 AFP】スペイン環境当局は24日、フランスとの国境地帯の山間地に再導入されたヒグマの中に馬を殺す「異常な捕食行動」を示す個体がいるとして、この個体を同地域から排除することもあり得ると明らかにした。

「ゴイアット（Goiat）」と名付けられた年齢13～14歳とみられるこの個体は、もともとスロベニアにいたものだが、2016年にスペイン北東部カタルーニャ（Catalonia）自治州のヒグマの数を増やすため同地域に連れてこられた。ゴイアットは首にGPS装置がつけられており、家畜が襲われた場所で探知された。

　カタルーニャ自治州環境当局はAFPに対し、「このヒグマは異常な行動を見せている。過剰な捕食行動を示し、住宅や村の近くで雄馬や子馬、雌馬など、通常はクマが襲わないような動物を殺している」と述べた。

　ヒグマ協会のギジェルモ・パロメロ（Guillermo Palomero）会長は、「クマが体重500キロもある馬を殺すのは非常に奇怪なことで、多くの懸念が生まれている」と語った。

　同自治州環境当局の報道官は、「ピレネー山脈（Pyrenees）の自然環境からこの個体を排除する可能性は昨年から検討されている」と述べた。しかし当局はまずこの個体の殺りくを止めるべく、怖がらせるために爆竹を投げたり、ゴムボールや空砲を発射したりしているという。

　ヒグマ協会によると、ピレネー山脈のフランスとスペイン側には現在少なくとも49頭のヒグマが生息している。パロメロ会長は、1996年に始まったピレネー山脈へのヒグマの再導入プログラムは「非常にうまくいっている」として、このプログラムに疑いを差し挟むことには反対した。

　一方、スロベニアから連れてこられてクラベリーナ（Claverina）と名付けられた別のヒグマも、スペイン北部ナバーラ（Navarra）州で雌羊数頭を殺したと報じられ、同国内で恐怖を引き起こしている。

　スペインとフランス政府当局代表は今月中旬、スペイン首都マドリードでクラベリーナについて会談し、さらなる襲撃を防ぐため一層協力することで合意した。(c)AFP