【5月20日 AFP】2016年のリオデジャネイロ五輪、そして2018年の平昌冬季五輪で、上半身裸の旗手としてインターネットを中心に話題を呼んだトンガのピタ・タウファトファ(Pita Taufatofua)が、2020年東京五輪でもオイルを塗った姿を披露することを狙っている。タウファトファが目指すのは三つの異なる種目で出場するという、かつてない五輪「三冠」だ。

 タウファトファはリオ大会にはテコンドーで、平昌大会にはクロスカントリーで出場。そして東京大会にはテコンドーだけでなく、カヤック選手としてこぎ出そうとしている。35歳のタウファトファは「三つの完全な別種目に出場するという、近代五輪では初めての選手になりたい」「室内スポーツと冬にクロスカントリー、そして水上種目だ」「僕はカヤックに乗って育ってきたから、そんなに大それたことじゃない」とコメントした。

 タウファトファが一躍脚光を浴びたのはリオ五輪の開会式。腰にタオバラ(ta'ovala)と呼ばれる伝統的な織物を巻き、上半身をオイルで光らせた姿はすぐさまインターネット上で話題となり、ツイッター(Twitter)で4500万回もコメントされた結果、米国のトーク番組からも声がかかった。そして2年後の平昌五輪でも、氷点下の寒さの中で凍傷の危険を冒して同じパフォーマンスを披露した。

 オーストラリアのブリスベン生まれながら、トンガの血筋を非常に誇りにしているタウファトファは、リオ大会で出場したテコンドーでは15年の競技歴があったが、平昌大会のクロスカントリーに関しては一度もスキーを履いた経験がなく、雪を見たことも人生で1回しかなかった。それでも丸木を足にはめるなど練習を工夫し、暑さの厳しいオーストラリアにクロスカントリーの過酷な環境を再現して出場を成し遂げた。

 東京大会でのカヤック・スプリント200メートルに向けた挑戦も同じように無謀なもので、最初はなんとか購入できたプラスチックのカヌーをこぐことから始めた。現在は本物のカヤックが手元にあるが、競技用のすらりとした重さ10キログラムのカヤックと違って重量は40キロもあり、舟というよりはバスタブに近い。

 タウファトファは「今はレース用のカヤックに乗ると、バランスを取るので精いっぱい。いずれはきちんとしたカヤックを手に入れられるはずだが、今はその資金を工面できない」と話している。

 五輪出場へ向けたハードルは高い。東京行きを実現するには、8月にハンガリーで行われる世界選手権(2019 ICF Canoe Sprint World Championships)で5位以内に入るか、オーストラリアやニュージーランドといった経験値の高いライバルのいるオセアニア予選で圧勝する必要がある。五輪でのタウファトファは、リオのテコンドーでは1回戦敗退、平昌では出場119選手中114位だった。

 それでも、家のない子供たちを支援する仕事をしているタウファトファにとって、五輪を目指す最大の動機は成績ではない。タウファトファは「最下位も、みんなの見ている前で失敗することも怖くない」「むしろそれは挑戦する自由をくれる。次のレベルを目指していく挑戦と達成の過程なんだ」と話している。

 タウファトファの五輪での冒険は、万人に歓迎されたわけではなく、有名スキー選手たちからは明らかな反感を買った。平昌五輪ではノルウェーの金メダリストから「スキーを履くより体にオイルを塗ってた方がお似合いだと思うけどね」と鼻で笑われた。

 しかしカヤック業界はタウファトファを温かく歓迎し、国際カヌー連盟(ICF)は応援のメッセージをツイッターに投稿している。

「ピタ・タウファトファが3回目の五輪挑戦にわれわれの競技を選んでくれたことをとてもうれしく思います。厳しい道のりになるでしょうが、彼ならやってくれるかもしれません」 (c)AFP/Neil SANDS