【5月19日 AFP】10年間植物状態となっているフランス人男性の延命医療を打ち切ると担当医が決断したことについて、この男性の両親らが18日、エマニュエル・マクロン(Emmanuel Macron)大統領に延命医療の継続を求めた。担当医は20日に延命医療を打ち切るとしている。

 バンサン・ランベール(Vincent Lambert)さんは2008年に自動車事故に遭い、脳に重度の損傷を負って四肢まひとなった。ランベールさんの延命医療は、家族を引き裂く法廷闘争に発展している。

 フランス当局の公式な立場は、患者は「治癒が極めて困難」な状況による苦しみを受けない権利があるというもの。ランベールさんの担当医は今月10日、あらゆる延命医療を20日に打ち切る方針を家族に伝えた。

 担当医らは2014年、フランスの消極的安楽死法に基づき、ランベールさんの妻ラシェルさんときょうだいのうち5人、おいのフランソワさん同意を得て栄養・水分の補給を中止すると決定した。しかし、敬虔(けいけん)なカトリック教徒の両親と片親違いのきょうだいらは、より良い治療を受ければ病状が改善する可能性があると主張。延命治療の中止を差し止める裁判所命令を得た。

 両親らの弁護団は18日、大統領に宛てた公開書簡を発表した。公開書簡には、「大統領閣下、あなたが何もしなければ、バンサン・ランベールは5月20日の週に水分不足で死去するでしょう。あなたは介入することができる最後で唯一の人なのです」と書かれていた。さらに、ランベールさんがこのまま亡くなった場合、後世の人々はこの出来事を「国家犯罪」とみなすでしょうとも記されていた。

 国連(UN)の「障害者の権利委員会(Committee on the Rights of Persons with Disabilities)」は今月、フランス政府に対し、ランベールさんの延命に関して、その法的問題を調査している間はいかなる決定も行わないよう要請。18日にも改めて同じ要請をした。両親はこの要請に従うようマクロン大統領に求めている。(c)AFP