【5月19日 AFP】オーストリアのセバスティアン・クルツ(Sebastian Kurz)首相は18日、ハインツクリスティアン・シュトラッヘ(Heinz-Christian Strache)副首相兼公務・スポーツ相(49)がロシア人支援者を装った女性に便宜供与を持ちかける映像が明るみに出たことを受けて、議会を解散し総選挙を実施する意向を示した。

 各メディアが17日に報じたところによると、シュトラッヘ氏は2017年下院選の数か月前、スペイン・イビサ(Ibiza)島でロシア人の支援者を装った女性に対し、選挙支援の見返りに公共事業を受注させる便宜供与を約束したとされる。

 ドイツのニュース週刊誌シュピーゲル(Der Spiegel)と主要日刊紙・南ドイツ新聞(Sueddeutsche Zeitung)は17日、イビサ島の豪華な別荘で行われたやり取りの隠し撮り映像を公開した。

 映像の中で女性は、同国最多の発行部数を誇るタブロイド紙、クローネン・ツァイトゥング(Kronen Zeitung)を掌握したいと具体的に要求。シュトラッヘ氏は、クローネン紙の新オーナーが人事異動を行い、同紙を使って選挙戦で自身が率いる極右政党・自由党(FPOe)を支援する可能性をほのめかし、そうなれば女性は公共事業を受注することができるだろうと続けた。

 シュピーゲル誌と南ドイツ新聞によると、シュトラッヘ氏は「ジャーナリストは地球上で最も無節操」なので、クローネン紙の編集部員からの抵抗はないだろうとも述べたという。

 さらに、公共放送のオーストリア放送(ORF)を一部民営化する可能性をほのめかした上で、オーストリアメディアの状況を隣国ハンガリーのようなものにしたいとも述べた。ハンガリーでは、右派で国家主義者のオルバン・ビクトル(Orban Viktor)首相がメディアを再編して政府のプロパガンダ機関とする一方、支援者らが民間メディアの買収を着々と進めている。

 映像の中でシュトラッヘ氏は、自由党にではなく党の関連財団に政治献金することもできると言外にほのめかした。法律による監視を免れる迂回(うかい)献金のためとみられる。

 シュピーゲル誌、南ドイツ新聞とも、スキャンダルの仕掛け人について確かな情報は得られていないとしている。

 シュトラッヘ氏は18日、クルツ首相が解散総選挙の意向を明らかにする前に辞任を表明。自身はわなにはめられた被害者だと主張した。

 2017年10月の下院総選挙で第1党になったクルツ首相の中道右派・国民党(OeVP)と自由党は、同年12月に連立政権を発足させていた。(c)AFP/Jastinder KHERA