【5月17日 AFP】オーストリア政府は16日、インターネット上で始まった「牛にキスするチャレンジ」と題したチャリティー募金活動について警鐘を鳴らし、「危険な迷惑行為」だとして人々に挑戦しないよう求めた。

「#KuhKussChallenge (牛にキス・チャレンジ)」は15日、スイス製のアプリ「Castl」が立ち上げた。スイス国内やドイツ語圏のユーザーに向け、牛にキスして募金を集めようと呼び掛けており、キスするときは「舌を入れても、入れなくてもよい」としている。

 この挑戦についてオーストリアのエリザベート・ケスティンガー(Elisabeth Koestinger)持続可能・観光相は、16日の声明で「危険な迷惑行為」だと一蹴。子牛を守ろうと牛たちが攻撃的になる可能性もあると指摘し、「牧草地や放牧地は、ふれあい動物園ではない。牛にキスするなどの行為は、深刻な結果を招きかねない」と述べた。

 オーストリアの山岳地帯では、地域経済を支える主要2産業の観光と牧畜のバランス維持が難しい問題となっている。

 今年2月には西部チロル(Tyrol)州で、女性観光客が放牧中の牛の群れに踏まれて死亡した事故の裁判があり、賠償金49万ユーロ(約6000万円)を遺族に支払うよう畜産農家に命じる判決に激しい反発が起きた。畜産農家は上訴。オーストリアの農家組合はこれを支持し、一審判決が維持されれば「オーストリアの放牧地は終わる」と危機感を強めている。

 政府は、牛と観光客の事故防止のため「行動規範」を発行し、山歩きをする観光客に牛の群れをできるだけ避けるよう呼び掛けている。ケスティンガー氏は、「(牛にキスする)このようなチャレンジは、放牧地での共存を推進するわれわれの努力を無視した行動で、全く理解できない」と批判した。(c)AFP