【5月16日 AFP】今年1月に世界初となる月の裏側への着陸に成功した中国の月探査機「嫦娥4号(Chang'e-4)」による探査で、月の形成の謎解明に一歩近づくと考えられる鉱物が発見された。英科学誌ネイチャー(Nature)に15日、発表された。

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 月はその形成過程において、全体または一部が溶岩の状態だったと考えられている。同様の惑星は、太陽系には他にもある。月の形成に関する仮説の一つである「マグマオーシャン説」では、この溶岩が冷える段階で、密度が大きい鉱物はマグマオーシャンと呼ばれるマグマの海の底に沈み、密度が小さい鉱物はその表面部分に集まりマントルを形成したとされている。

 嫦娥4号のチームは、月の南極付近にあるエイトケン盆地(Aitken Basin)のフォンカルマン・クレーター(Von Karmen Crater)で、カンラン石や低カルシウム輝石など、月の他のエリアでは見られない鉱物を確認した。

 これらの鉱物について論文の執筆者らは、隕石(いんせき)が衝突した際に月の上部マントルから飛び散ったものだとの考えを示している。

 中国科学院(Chinese Academy of Sciences)の李春来(Chunlai Li)氏はAFPの取材に対し「われわれの研究結果は月のマグマオーシャン説を補強するもので、同説によって月の進化過程の初期段階を説明できる可能性を示している」と話した。

 今回の発見について、フランスの天体物理学・惑星学研究所(IRAP)のパトリック・ピネ(Patrick Pinet)氏は「ワクワクする」とコメントし、研究結果には「惑星内部の形成と進化の理解に影響を与える可能性がある」と指摘している。また今後は、月の裏側のさらなる研究が「最大限に重要」とも述べた。(c)Patrick GALEY