■影響は?

 ジョージア州は、映画制作会社にとって多くの好条件を提示している。ロサンゼルスに比べて生活費が格段に安いことや景観に富んでいること、税額が最大30%控除されることなどだ。

『ブラックパンサー(Black Panther)』や『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー(Avengers: Infinity War)』といった米マーベル・スタジオ(Marvel Studios)の大ヒット映画や、テレビシリーズの「ストレンジャー・シングス 未知の世界(Stranger Things)」や「ウォーキング・デッド(The Walking Dead)」などは同州で撮影された。昨年は450本以上の番組が同州で撮影され、計27億ドル(約3000億円)という無視できない額の恩恵がもたらされた。

 だがケンプ州知事は法案に署名する前、「われわれは、無実でか弱い子どもたちを擁護する。自分で声を上げることのできないその子たちのために立ち上がり、主張する」と断固宣言していた。

 脚本家らが加盟する全米脚本家組合(WGA)は、同法案によってジョージア州は、映画業界の人々が「仕事しにくい場所」になってしまうだろうと述べている。

 他方、大手制作会社は、大半が沈黙を守っている。ハリウッドの大手映画会社、パラマウント(Paramount Pictures)やソニー(Sony)、ユニバーサル・ピクチャーズ(Universal Pictures)、ディズニー(Disney)、ワーナー・ブラザーズ(Warner Bros)、ネットフリックスなどが加盟する米映画協会(MPAA)の広報担当者クリス・オートマン(Chris Ortman)氏は、同協会では「今後の展開を注視」しつつ裁判所の決定を待つ姿勢を示した。

 また同氏は、映画業界がジョージア州で9万2000件の雇用を生み出していることにも言及した。この事実は一部議員からも指摘されており、雇用をめぐって懸念の声が上がっている。

 昨年11月の州知事選で共和党候補に僅差で敗れた民主党のステイシー・エイブラムス(Stacey Abrams)氏は、「行動の呼び掛けは称賛するが、『#boycottgeorgia(ジョージアのボイコット)』はやめてほしい」とツイッターに投稿した。

 エイブラムス氏の意見に賛同する人々もいる。ジョーダン・ピール(Jordan Peele)監督とJ・J・エイブラムス(J.J. Abrams)監督は芸能誌ハリウッド・リポーター(Hollywood Reporter)に対し、新作「Lovecraft Country」の撮影は予定通り同州で行うが、なんらかの費用を中絶規制法に反対する団体に寄付すると語っている。(c)AFP/Javier TOVAR / with Brian Knowlton in Washington