【5月11日 AFP】フランス国民議会(下院)は10日、先月の大火災で損壊したパリのノートルダム大聖堂(Notre Dame Cathedral)を5年以内に修復する法案を承認した。

 850年前に建てられたノートルダム大聖堂はゴシック建築を代表する建造物だが、4月15日に発生した火災で、木造の屋根の大部分が損傷した。

 エマニュエル・マクロン(Emmanuel Macron)大統領は火災の数日後、修復工事の完了目標を5年以内に設定。2024年に開催されるパリ五輪には間に合うことになる。

 この法案は修復工事の迅速化を狙ったものだが、ノートルダム大聖堂を保護するための手続きを廃止する内容が含まれていたことで物議を醸していた。

 法案は第一読会での13時間に及ぶ議論の後、賛成32票、反対5票、棄権10票で承認された。今後は上院に送付され、5月27日にさらなる審議が行われる。

 ノートルダム大聖堂の修復に対しては、これまでの寄付された、または寄付が表明された金額の合計が、10億ユーロ(約1240億円)近くに上っている。フランク・リーステール(Franck Riester)文化相は寄付金について、全額をノートルダム大聖堂の修復のみに充てると約束した。

 専門家らは、修復費用の総額が6億~7億ユーロ(約740億~860億円)になるとみているものの、残余金の使途に対して疑問の声が上がっており、別の荒廃した教会や聖堂に使い回される可能性も取り沙汰されている。

 宗教的文化財の監視に取り組む団体によれば、同国内には4万~6万堂の教会と礼拝堂があり、うち5000堂が荒廃した状態にあるという。

 法案には、短期間での作業を監督・実施する公的機関の設置も構想されているが、計画立案から、環境と遺産の保護、および競争入札の管理にまでまたがる権限がこの機関に付与されることも議論を呼んでいる。(c)AFP