■水力発電は環境に影響が少ない?

 さらにダムは、堆積物の流れを減少させる。河川を流れる堆積物は河川デルタを形成し、何百万もの人を海面上昇から保護する役目を果たしている。

 現在、自由に流れる河川のうち海までつながっているものは4分の1以下にとどまっており、河口に必要不可欠な栄養物が不足する事態が起こっている。

 動物性タンパク質のほぼすべてを河川魚類によって摂取している人は1億6000万人近くに上るが、ダムはすでにこれら魚類の大幅な減少を引き起こしていると、研究チームは警告する。

 今回の研究ではさらに、計画段階または建設中の水力発電プロジェクト3700件以上を特定した。この中には、流域の住民にとって不可欠な生活手段を提供している河川を対象としたプロジェクトも含まれている。

 水力発電は排出物質という観点において、石油や天然ガス、石炭などに比べて非常にクリーンだと言えるが、ダムや貯水池などを含む巨大発電プロジェクトは予期せぬ悪影響をもたらす可能性があると、研究チームは強調する。

 マギル大のベルンハルト・レーナー(Bernhard Lehner)教授は、AFPの取材に「化石燃料を回避することでプラスの効果があることはよく言われているが、水力発電はそれよりも複雑な影響を環境に及ぼしていることは間違いない」と語った。

 さらにレーナー氏は、水力発電は果たすべき必然的役割があるが「世界の国々は河川と河川に依存する共同体や都市、生物多様性に対する有害な影響がより少ない太陽光や風力などの持続可能な選択肢に重点を置くべきだ」と述べた。(c)AFP/Patrick GALEY