【5月9日 AFP】ドナルド・トランプ(Donald Trump)米大統領は8日、民主党との対立が激化する中、大統領特権を初めて行使し、2016年米大統領選のロシア疑惑の捜査報告書の全面開示要求を拒否した。

 ホワイトハウス(White House)側が、ロバート・モラー(Robert Mueller)特別検察官によるロシア疑惑の捜査報告書の黒塗り部分を含む広範な文書を非開示とすることをもくろむ一方、議会側は監督責任を果たすべく、召喚状を出してこれらの文書の開示を要求した。

 下院司法委員会(House Judiciary Committee)は、ウィリアム・バー(William Barr)司法長官が捜査報告書を全文開示しなかったのは「議会侮辱罪」に当たるとする決議案を可決し、トランプ氏は異例の大統領特権の行使に踏み切った。

 サラ・サンダース(Sarah Sanders)米大統領報道官は、「ホワイトハウスもバー司法長官も、(下院司法委員会のジェラルド・)ナドラー(Jerrold Nadler)委員長の違法かつ無謀な要求に従わない」と述べた。

 スティーブン・ボイド(Stephen Boyd)司法次官補は議会に対する書簡で、トランプ氏は「召喚状が出されたすべての資料について、大統領特権を行使した」と述べた。また、どの文書を議会に開示するかをめぐる交渉は、バー司法長官を議会侮辱罪に問うナドラー委員長の試みによって「打ち切られた」と述べた。

 ナドラー氏は「この決定は、憲法に定められた議会の義務を全面的に軽視するトランプ政権の態度が明らかにエスカレートしていることを示すものだ」と述べた。

 民主党議員らは対立の拡大を憲法の危機と表現しており、トランプ大統領の弾劾手続きを求める声も一部にある。一方、トランプ政権側は、大統領の引き下ろしを画策しているとして民主党議員らを非難している。(c)AFP/Michael Mathes