【5月6日 AFP】イタリア・ルネサンスの巨匠レオナルド・ダビンチ(Leonardo da Vinci)は外傷性神経損傷による「鷲(わし)手変形」の影響で、晩年に絵を描く能力が損なわれていた可能性があるとする研究が3日、英国王立医学協会(Royal Society of Medicine)の医学誌「Journal of the Royal Society of MedicineJRSM」に発表された。

 この研究を発表したのは、イタリアの再建外科医ダビデ・ラゼリ(David Lazzeri)氏と神経科医のカルロ・ロッシ(Carlo Rossi)氏。ダビンチはこの神経損傷のために右手でパレットを持つことさえできなくなったが、左手で絵を描き続けたという。

 多くの研究者はこれまでダビンチの右手のまひについて、脳卒中または指が伸ばしにくくなる病気、デュピュイトラン拘縮(こうしゅく)によるものと推測してきた。

 ラゼリ氏とロッシ氏は、16世紀のイタリアの画家、ジョバンニ・アンブロージョ・フィジーノ(Giovanni Ambrogio Figino)作とされる、ダビンチをモデルにチョークで描かれた作品を調査。ダビンチはこの作品で腕つり用のサポーターを着けているかのように服から右手を出し、右手の指の関節は拘縮して描かれている。

 ラゼリ氏によると、ダビンチの右手は脳卒中後遺症の筋痙縮(けいしゅく)でみられる典型的な握り拳状の変形ではなく、一般的に「鷲手変形」として知られる尺骨神経まひなど別の病状であったことを、この絵画は示唆している。ダビンチが尺骨神経まひだったとすれば、ダビンチが最期の5年間、制作などの活動を続ける中、なぜ代表作の「モナリザ(Mona Lisa)」をはじめとする多くの絵画を未完のまま残したのかの説明が付くという。

 伊フィレンツェ(Florence)の博物館の研究チームが先月発表した別の研究によると、ダビンチは完全な両利きで、右手と同じように左手でも文字を書いたり、絵を描いたりすることができたという。この研究は、ダビンチの初期作品の分析に基づくもの。

 ダビンチの没後500年を迎えた2日、エマニュエル・マクロン(Emmanuel Macron)仏大統領とセルジョ・マッタレッラ(Sergio Mattarella)伊大統領は記念式典に出席した。死去したフランスでは他にもさまざまな記念行事が予定されている。(c)AFP