【5月4日 AFP】陸上女子中距離のキャスター・セメンヤ(Caster Semenya、南アフリカ)は3日、ダイヤモンドリーグ(IAAF Diamond League 2019)開幕戦のドーハ大会で800メートルに出場し、1分54秒98で優勝を飾った。国際陸上競技連盟(IAAF)の新規則への異議申し立てが棄却されてから初めてとなるレースの後には、「言葉よりも行動の方がより多くを物語る」と反骨精神を示した。

 五輪の同種目で2度の金メダルに輝くセメンヤは、ブルンジのフランシーヌ・ニヨンサバ(Francine Niyonsaba)を1分57秒75の2位、米国のアジー・ウィルソン(Ajee Wilson)を1分58秒83の3位に抑え、勝利を手にした。しかし、女子選手のテストステロン(testosteron)値を制限する新規則が今月8日から適用になることから、同種目への出場はこれが最後になる可能性がある。

 セメンヤはホルモン値を抑制する治療を受けるつもりはあるか問われると、「まさか、あり得ない」「次はどうなるか分からない。だけど、誰も私に指図することはできない。私に何かをやめさせたいというなら、それは彼らの問題で私には関係ない」とコメント。

 さらに、英BBCに対して、「言葉よりも行動の方がより多くを物語る。偉大な王者というのは、常に約束を果たすもの」「私にとって人生はずっとシンプルで、ここにいるのは、自分を愛して支えてくれる人々との約束を果たすため。人生の一瞬一瞬を楽しめているのは、おそらく周りの人々から必要な愛をもらっているおかげ」と語った。

 28歳のセメンヤがカタールの首都ドーハで行われている今大会の女子800メートルにエントリーしたのは、女性アスリートのテストステロン値を制限する新規則への異議申し立てがスポーツ仲裁裁判所(CAS)から退けられた翌日のことだった。

 セメンヤが提訴していたIAAFの方針は、いわゆる「高アンドロゲン」もしくは「体の性のさまざまな発達状態(性分化疾患、DSD)」のアスリートが女性として競技を続ける場合、人工的に体内のテストステロンを基準値まで下げることを強要するもので、女子の400メートルから1マイル(約1600メートル)の種目が対象となっている。

 セメンヤは2日、自身のツイッター(Twitter)アカウントに「引き際をわきまえるのは知恵、実行に移すのは勇気、頭を高く上げて去りゆくのは尊厳」と書き込み、競技生活から退くことを示唆していた。

 9月に開催される世界陸上ドーハ大会(IAAF World Championships in Athletics Doha)の開催地で大会記録を樹立した後、セメンヤは競技の枠を超えたことのために闘っているとして、「これは世界に喚起を促すための闘いで、競技やスポーツの枠を超えたもの。人間の尊厳と誇りの問題で、世界に喚起を促すためにやるべきこと」と訴えた。

「争いを仕掛けられても、私は争わない。私は人生を生きて楽しむ」「もちろん、9月にタイトルを連覇することが自分の目標! だけど、私は(400メートルから5000メートルまで)次から次へとレースに臨むクレイジーなアスリートで、これからもそうしていく」

「今夜は素晴らしいレースだったし、懸命に戦った。最高の気分ですごく満足している。目標は果たせた」「1分54秒台はとても良いタイム。これから帰国して、1分54秒を上回るための練習に励むつもり」 (c)AFP/Robin GREMMEL