【5月3日 AFP】南米ベネズエラの首都カラカスで4月30日に発生した軍の蜂起は、瞬く間に終息に向かった。だが、ニコラス・マドゥロ(Nicolas Maduro)大統領に残された時間はごくわずかだと米国は主張する──。こうした状況について専門家らは、野党指導者の力量を米国が過大評価しているとしながら、長期化したこう着状態を打開するための選択肢は限られていると指摘する。

 米国を含む50か国以上から、暫定大統領就任への承認を得ている野党指導者のフアン・グアイド(Juan Guaido)国会議長は4月30日、カラカスの空軍基地で「勇敢な兵士」の一団から支持を得たと声を挙げた。この直後、政権に対する抗議デモが発生したが、マドゥロ氏がこれを鎮圧するまでにはそう時間はかからなかった。

 これを受ける形で、マイク・ポンペオ(Mike Pompeo)米国務長官は1日、「軍事行動もあり得る」とベネズエラ政府をけん制した。しかし、米国は過去3か月にわたってすでに、広い範囲を対象とした経済制裁を同国に科している。ベネズエラ政府にとって命綱である国営石油会社もその対象だ。

 中南米地域における民主主義を後押しする「インターアメリカン・ダイアログ(Inter-American Dialogue)」のマイケル・シフター(Michael Shifter)会長は、「反対勢力がマドゥロ氏の力を過小評価していたのは明らかだ。マドゥロ氏は抗議活動による相当な圧力に持ちこたえる能力がある」と述べた。

■米国による心理戦

 米トランプ政権は、ベネズエラに心理戦での攻勢を強めている。マドゥロ氏が同盟国であるロシア、キューバ、中国に頼る弱い指導者だという印象を周囲に与えようとしているのだ。

 4月30日の蜂起が鎮圧されるなか、ポンペオ氏はマドゥロ氏が同日早朝にキューバへの亡命を試みたが、ロシアによって制止され断念したと発表した。しかし、マドゥロ氏もロシアもこれを事実ではないと否定している。

 米シンクタンク「ケイトー研究所(Cato Institute)」のテッド・ガレン・カーペンター(Ted Galen Carpenter)上席研究員は、軍がマドゥロ政権を支える重要な役割を果たしており、軍関係者の亡命者がわずかなことに米政府は驚いていると語る。

「面目を保つだけの理由で、米国が直接的な軍事行動に出ることを懸念している。それは事態を悪化させるだけだというのが私の考えだ」