【5月2日 AFP】ウィリアム・バー(William Barr)米司法長官は1日、2016年大統領選へのロシア介入疑惑の捜査結果について米議会上院司法委員会の公聴会で証言し、ドナルド・トランプ(Donald Trump)大統領による司法妨害はなかったと結論付けた自身の判断は正しかったと主張した。

 バー氏は3月24日にロシア疑惑の捜査報告書の概要を明らかにした際、トランプ氏の刑事責任を問うには証拠不十分と結論付けた。しかし、捜査を指揮したロバート・モラー(Robert Mueller)特別検察官がバー氏の判断に異論を唱える書簡を私的に送っていたことが分かり、バー氏が捜査報告書の内容を「ごまかした」のではないかとの疑惑が出ている。

 バー氏は1日の公聴会で、捜査結果をゆがめて発表したとの批判を否定した。

 4月30日に公開されたモラー氏の3月27日付の書簡は、バー氏が公表した4ページの捜査報告書概要について、モラー氏の捜査結果の「文脈、本質、要旨を十分に捉えておらず、一般の人々に混乱」を招いたと非難している。また、モラー氏が3月中に少なくとも2回、捜査チームがまとめた捜査報告書の要約版をまず公開するよう提案したが、バー氏がこれを無視して自身の手による概要を公開した経緯も判明した。

 バー氏の概要発表を受け、トランプ氏は「完全かつ全面的な潔白証明だ」と宣言したが、4月18日に捜査報告書の完全版が一部黒塗りながら公表されると、トランプ氏が自身にとって不利となる振る舞いをしていたことが明らかになった。

 モラー氏の捜査チームは、トランプ陣営とロシアとの間に刑事責任を問われるような共謀があった証拠は発見できなかった。ただし報告書には、トランプ陣営がロシアとつながり、その妨害工作の恩恵にあずかろうと繰り返し試みていたことが詳細に記されていた。

 また、モラー氏はトランプ氏が捜査を妨害しようとしたことを示す言い逃れのできない事例を提示し、米議会で調査すべきだと提案していた。一方で、トランプ氏の行為が違法かどうかについて自分の見解を明らかにすることは差し控えた。

 バー氏は公聴会で、モラー氏が司法妨害に関して結論を出さなかったのを知って驚いたと発言。結論のない捜査報告書をそのまま公開すれば「無責任かつ不公正」になっていたと述べ、「人々に最終的な結論を知らせる」ために自身で概要をまとめたと釈明した。また、捜査報告書を「いつ、どのように公開するかは、ボブ・モラー氏ではなく、私の決定に委ねられたことだ」と述べた。(c)AFP/Paul HANDLEY