【4月29日 AFP】ベトナムの少数民族モン(Hmong)のブオン・ズイ・バオ(Vuong Duy Bao)さんは、北部ハザン(Ha Giang)省にある祖父が建てた木造の御殿を、当局から取り返そうとしている。

 軍閥の有力者だったバオさんの祖父が、アヘン事業で成した財で1903年に建てたこの屋敷には、かつてこの地域で栄えた産業をしのばせるケシの花が彫刻された柱や、旧宗主国フランスから輸入された鉄で作られたフェンスなど、歴史の跡が残されている。

 バオさんは、地元当局がこの資産を同家から取り上げ、現在は返還を拒否していると主張している。当局はこの建物を博物館として利用している。

 バオさんはハノイで暮らしていたが、公務員を退職した後に地元に戻った際、地元当局がこの御殿の所有権を取得していたことを知った。当局はバオさんが不動産の譲渡証書を出すことができなかったのを理由に、バオさんの所有権を認めなかったのだ。

 だがバオさんは、この建物の建築当時は公文書というもの自体が存在していなかったと指摘し、バオさん一家とこの御殿とのつながりはこの地域の歴史書を見れば分かると主張している。博物館に展示されている写真にも、バオさん一家と御殿とのつながりを示すものがあるという。

 多くのモンの人々は、政府が観光収入を増やすために彼らの文化遺産を勝手に奪っているのではないかと思っている。バオさんにとって、御殿奪還の闘いは個人的な域を超えるものだ。

 モンの遺産はモンの人々の手にあるべきだとバオさんは考える。中国を起源とする結束の固いこの少数民族は、米カリフォルニア州やミネソタ州、ラオスからタイに至るどの地に定住しようと、誇りを持って自分たちの慣習を守っている。