■再び失われる安全性

 国際的な監視機関の閉鎖について、米国を拠点とする「労働者人権協会(Worker Rights Consortium)」のローラ・グティエレス(Laura Gutierrez)氏は、「労働者や工場主に恐ろしい結果をもたらす」と警告する。「バングラデシュでの活動がより危険なものとの認識をブランド側に与えることになる」

 また、衣料産業従事者の労働環境の改善を訴えるNGO「クリーン・クローズ・キャンペーン(Clean Clothes Campaign)」のクリスティー・ミデマー(Christie Miedema)氏も、これまで改善されてきた安全性が「失われる」と指摘している。

 H&Mやザラ、スポーツ用品大手「アディダス(Adidas)」、テスコ、英アパレル「ネクスト(Next)」などの大手ブランドからも同様の懸念の声が上がっている。

 ネクストは「バングラデシュでの現在のアコードの活動を早期に終了することは、既製服業界で働く人々の安全にとって悪影響となる」と指摘する。

 これまで1700の工場の検査を行ってきたというアコードも、安全性を確保するにはさらなる時間が必要との見方を示している。

■相次ぐ火災

 バングラデシュ政府によると、崩壊事故以来、監視機関や地元政府の努力により状況は改善しており、工場における死亡事故は大幅に減少しているという。また、工場の安全性を単独で確保する能力も政府にはあると主張している。

 だが、最近ダッカで発生した2件の火災では約100人が死亡しており、危険はいまだ残っていることが浮き彫りとなった。複数の縫製会社が入居していた22階建てのビルの火災では、安全基準が満たされておらず、建築基準法にも違反していたことが分かっている。非常口の多くに鍵がかけられていたのだ。

 それにもかかわらず、大きな影響力を持つ「バングラデシュ縫製品製造業・輸出業協会(BGMEA)」は、国際的な監視機関の閉鎖を望んでいる。